儲かる農業 下剋上#2Photo:technotr/gettyimages

農水省は、農協職員による共済の"自爆営業"の防止に乗り出した。だが、行政は政治的配慮から農協の不正に目をつぶりがちだ。特集『儲かる農業 下剋上 ピンチをチャンスに』の#2では、自爆営業より悪質な共済の不正を「不問」にした群馬県庁のお目こぼしを暴く。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

JA邑楽館林で共済不祥事が発生!
群馬県庁「おとがめなし」の理由

  自爆営業を強いられている農協職員の悲痛な声を受け、農水省が重い腰を上げた。不要な共済契約を職員が結んでいる実態があり、かつ組織的にそれを強要していた場合には、「不祥事件」として扱い指導や勧告を行うことを監督指針に盛り込んだのだ。

 農水省の監視が強化されたことで、自爆営業を撲滅する方向性が示された。それ自体は望ましいことだが、実際に抜本的に問題を解消するのは簡単ではなさそうだ。

  その理由の一つ目が、職員が「不要な契約を結んだ」と実名で申し出なければ、行政は動けないということだ。退職を決めた職員ならまだしも、そうでない現役職員が自爆営業を告白するのは難しい。

 仮に、職員が自爆営業を届け出た場合、農協はそれを都道府県庁に報告し、行政による調査が始まることになる。

  だが、県庁が厳正に対応すると信じる農協職員は極めて少ない。

 というのも、農協の政治力に配慮してか、県庁がお目こぼしをする例が少なくないからだ。

 群馬県のJA邑楽館林で発生した共済不正が典型例だ。不正に関与したのは、共済の推進課長、推進トレーナー、共済専任の渉外担当者、役員の4人だ。

   同農協ではどのような不正が行われ、なぜ役職員4人に適切な処分がなされぬまま幕引きが図られたのか。

 そしてその報告を受けた群馬県庁の対応は適切だったのか。次ページで「共済不祥事」の詳細を明らかにしていこう。