四条烏丸と京都御苑の梅名所

楚々と咲く数本の梅の木を静かに眺められる穴場的スポットがあります。北野天満宮と同様、菅原道真公とゆかりの深い菅大臣神社です。地下鉄烏丸線「四条」・阪急京都線「烏丸」駅から5分ほどの街なかにあります。
この一帯にはかつて菅公の邸宅や学問所があり、菅公誕生の地と伝わります。往時にあった二つの御殿、紅梅殿と白梅殿のうち、白梅殿跡地が菅大臣神社となりました。紅梅殿にあった梅の木が、先述の歌に詠まれた梅といわれ、菅公の後を追って一夜にして大宰府へ飛んで行き、大宰府に根付いた「飛梅伝説」として語り継がれています。北野天満宮のご本殿に向かって左手にある樹齢400年以上と伝わるご神木の紅梅は、この飛梅伝説の原種であるとされています。
もう一つの無料で楽しめる梅名所は、京都御苑。地下鉄烏丸線「丸太町」から「今出川」までひと駅分に及ぶ南北1300m、東西は700mの京都御苑の広大な緑地公園には、かつて公家たちの邸宅が立ち並んでいました。幕末の“禁門の変”で知られる蛤御門から東へすぐのところに桃林が、その南側に梅林が連なります。約170本ある御苑内に咲く梅のうち、約120本がこの梅林にあります。例年2月中旬から3月中旬に咲きますが、取材時点では、梅はまだつぼみでした。こちらも開花が待ち遠しいところです。
京都御苑は街なかのオアシス的存在。タイミングが合えば梅だけではなく桃(例年3月中旬~4月上旬が見頃)、さらには京の都に春を告げる近衛邸跡「糸桜」(同3月下旬~4月上旬)の“梅桃桜”を同じ日にめでることが今年はできるかもしれません。
梅林のすぐ近くには、暖房の効いた室内でひと休みできる無料休憩所「中立売休憩所」も。おばんざいを並べた1段目と、京野菜の天ぷら、蒸し京都赤鶏など4種から主菜が選べる2段目を車輪の付いた黒色の器に重ねた「御所車御膳」は、この休憩所で雅さを味わえる人気のランチメニューです。自分で点(た)てることのできる抹茶セットや、月桂冠や丹山酒造の京都の銘酒もそろいますので、カフェや食事所としても重宝しますよ。
取材時には、かつて琵琶湖疏水を引いていたという「出水の小川」付近で、ロウバイ(蝋梅)が満開を迎えていました。名に「梅」と付くので梅の仲間かと思われがちですが、ロウバイ科ロウバイ属で、バラ科の仲間ではない模様。梅よりひと足早く早春の芳香が感じられますので、咲いていたら顔を近づけてみてください。
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