アメリカで大きな反響を呼び、多くの読者の価値観を揺さぶった話題の1冊『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』(ブラッド・スタルバーグ著、福井久美子訳)。本書が明かすのは、私たちの人生を知らぬ間にすり減らす「思考の癖」だ。本稿ではその核心に迫りながら、ストレスに強い人の特徴を紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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人生の転機はいつも目の前にある
「安定した人生」を求めるのは、多くの人にとって自然なことだろう。たいていの人は、年齢を重ねるにつれて、「できるだけ大きな変化は避けたい」「今の環境を維持したい」と保守的な姿勢をとるようになるものだ。
しかし、このようなマインドセットに警鐘を鳴らし、全米で絶賛と共感の声を集めるのが『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』だ。
ウェルビーイング研究の第一人者である著者のブラッド・スタルバーグは、次のように述べている。
調査によると、大人は平均で36回も「人生を揺るがす出来事」を経験するという。18か月に1回の割合だ。変化と混乱は例外的な出来事だと思われがちだが、実際はどちらも通常の出来事だ。
(P.13)
この「人生を揺るがす出来事」には、仕事にまつわる変化から、パーソナルな人間関係の変化まで含まれる。この言葉が示すのは、大きな変化は私たちの生活の一部であり、避けて通ることのできない現実だということである。
スタルバーグは本書の中で、変化を拒否したり、かつての状態に戻ろうとする人ほど、問題を抱えやすいことを指摘している。疲労困憊になったり、燃え尽き症候群や無気力に陥るのがその典型例のようだ。
VUCA時代という言葉を当たり前に耳にするようになったが、変化が激しく不確実な今の世の中で本当に必要とされるのは、柔軟に変わりつづける力だといえる。
わたしたちが思うほど、あるいは願うほど人生は安定しているわけではない。
わたしたちの文化では安定性を求める風潮が強いが、それは絶え間なく変化し続ける現実を反映していない。適切なスキルさえあれば、変化は成長を劇的に後押しする力になり得るという事実もだ。
(P.14)
ストレスに強い人に共通する1つの特徴
「本書の特徴は、スタルバーグが最新の心理学や脳科学の知見をわかりやすく横断的に解説している点だ。なかでも「ストレスに強い人はどんな人か?」をテーマにした研究は非常に興味深い。
2022年の『ジャーナル・オブ・パーソナリティ・アンド・ソーシャル・サイコロジー』誌に、世界各地の7万人超を対象とした研究に関する論文が掲載された。
研究結果によると、変化や困難に何度も遭遇すると予測している人は、身体的にも精神的にもストレスに強いことがわかったという。そのような人は痛みに強く、不屈の精神を発揮しやすく、失敗しても立ち直って前進する可能性が高い。
(P.103~104)
「変化は常にあるものだ」と覚悟している人ほど、たくましく生きられるということだ。反対に「安定を守らなければ」と固執すると、想定外の出来事に直面したときに大きく動揺し、立ち直るのが難しくなる。
人生の転機は、予期せぬ形で訪れることが多い。しかし、それを恐れるのではなく、自分を変えるチャンスと捉えれば、新たな可能性が広がる。本書は、その大切さを教えてくれる。
※本稿は『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より一部を抜粋・編集して構成しました。