「こうすればうまくできるよ」と、最初から答えを伝えるのは手っ取り早いですが、それでは子ども自身が考える余白をこちらの答えが埋めてしまう。しかもこちらの考えも正解かどうかは分からない、にもかかわらずです。
子どもの可能性を広げる
考える力を鍛える指導法
うまくいかない原因を自分で考え、トライしたうえでうまくいった、いかなかったということを自分で体感することで納得感が高くなります。そうやって自分事として身に付けたモノが、子ども自身に芯として残っていくと思います。
元日本代表監督のイビチャ・オシムさんはそうでした。「こうなったらこうしろ」と、強制することがほとんどありませんでした。「こうしたほうがいいんじゃないか」、「こういうやり方もあるぞ」と選択肢を与える、選手の可能性を広げる声掛けをしていました。
「こうしなさい、ああしなさい」と教え込まれると、子どもは「そのとおりにしなきゃ、しないと怒られるかもしれない」という思考になります。情報過多で思考にすき間のない状態になり、自分なりの発想を表現する余裕がありません。創造性とか意外性のあるプレーが、なかなか出てこないのです。
子どもは社会の鏡です。今の社会環境で、どうやって「考える力を育んでいく」のか。子どもたちの才能を伸ばすために、我々指導者を含めた大人たちの取り組み方、接し方が問われています。
減点型指導を見直して
才能を活かす育成を
「1点突破型」の才能が減っているもうひとつの理由として、日本サッカー界に根づく選手育成の考え方があると感じます。「加点法式」ではなく「減点法式」です。
並外れて足が速い子どもがいるのなら、その「速さ」をもっといかす指導があっていい。その子がフォワードなら、ディフェンダーと駆け引きをしてパスを引き出す楽しさとか、ディフェンスラインの背後へ抜け出す爽快さを伝えてみる。速さという才能を引き立てる予備動作などに光を当てる。それを身に付けることができれば、子どもの中で新たな欲求が芽生えていくはずです。