優しい太郎さんは、「ああ、そうだね」と言ってそのまま妻の言い分を弟に伝えました。

 しかし、次郎さんには兄の言い分は納得できませんでした。結局、「兄は後妻に洗脳されている」と考えた次郎さんは、面倒になり弁護士に対応を依頼。最終的には法定相続分で決着がついたものの、多額の弁護士報酬がかかりました。

 医師は業務が多忙なため、仕事以外の業務を第三者に丸投げする人は少なくありません。よって、少しもめると弁護士に委任することが非常に多いです。

 しかし、言うまでもなく、兄弟同士の話し合いで解決できるのであれば、それが最善です。このケースでは、長男が再婚した時点で、母は遺言を作成すべきだったともいえるでしょう。遺言を作成すればその通りに遺産分割が執行されるため、このような兄弟間の協議を経ることなく名義変更が可能です。

事例で学ぶ相続(3)意外なカゾクが登場!?
前妻の子が権利を主張し大モメ!

 相続の話が出るとき、多くの人が「相続人=今の家族」と考えがちです。しかし、現実には前妻の子など、思わぬ相続人が登場することも意外とあるのです。

 例えば、都内に住む50代の男性、山田さん(仮名)。実の両親は幼い時に離婚。離婚してからは父に育てられ、母の記憶は全くありませんでした。

 そんなある日、弁護士から一通の手紙が届きました。内容は、幼いころ別れた母の遺産について。母はその後再婚し、子どもがいるようで、その子どもの弁護士からの文書でした。遺産相続の権利を放棄してほしいというのです。

 しかし、山田さんはこの提案に納得できませんでした。母の記憶もなく、せめてお金も含めて何か母とのつながりのある遺品の一つくらい、もらってもいいだろうと思ったのです。遺産の一部を相続するのは当然の権利だと考えました。

 一方で、母の再婚後の子は、「なんで、会ったことのない前夫との子どもに母の貴重な遺産を相続させなければいけないのか?」となるわけです。