どう改良され、乗り心地はどう変わったのか?
では、具体的にどのような改良を施したのか。
改良に際して、マツダが市場からの声を整理すると、大きく2点あったという。
一つは、大きな段差の乗り越えでのガツンという突き上げや、少しゴツゴツした乗り味。もう一つは、乗り味の硬さとは反対にクルマ全体が少しフワフワする、ということだ。
対応策として、フロントサスペンションではショックアブソーバーの減衰力を上げてクルマ全体を引き締めた。
また、ハンドリングでは直進安定性を上げるために、一部の部品の締結する箇所を改良した。
そして、課題となったリアサスペンションでは、乗り心地全体の柔軟性を考慮してスプリングをかなり柔らかい仕様に変更した。その上で、クルマの動きを引き締めるためにショックアブソーバーの減衰力を上げた。
また、バンプストッパーを短くした。この部品は、クルマが大きく沈み込むときにサスペンションの動きを最終的に止めるものだが、短くすることでサスペンションが動く範囲を広げた。
そして、ねじりの力を利用してクルマの剛性を上げる役目のスタビライザーの採用を控えた。
その他、リアサスペンションの一部でゴムのブッシュについても搭載角度を変更して、突き上げによるクルマ前後の動きを収束する設計見直しを行った。
こうしたサスペンションの大幅改良に伴い、またハンドルの戻りが少し弱いという市場の声も受けてパワーステアリングのセッティングを変更したり、四輪駆動システムを含めた車両制御についても制御プログラムを見直したりしている。
以上のような改良をした実車に乗った。
試乗車は、e-SKYACTIV 3.3Lディーゼルハイブリッド・4WDの「XD-HYBRID Premium Sports」と、e-SKYACTIV 3.3L ディーゼル・2WD(FR)の「XD SP」の2台。
それぞれ真っ先に感じたのは、路面からの突き上げの「角(かど)が取れた」ことだ。
クルマ全体として見れば、初期モデルで目指したマツダの理想形が崩れているという印象はない。また、理想と現実の間での妥協点という感じでもない。
CX-60本来の良さが際立ってきた、といえるであろう。
その上で、CX-60が目指す「箸を扱うようなハンドリング」という面については、
「XD-HYBRID Premium Sports」でより強く感じた。
「理想と現実」を意識して大幅改良されたCX-60は、マツダが目指すマツダらしいクルマへとさらに近づいたといえる。