人事×AIの現在地
富士通の新たな取り組みが、人事領域でのAI活用だ。「まだ試行錯誤の段階ですが、いろんなトライをしています」と平松さん。
特に成果を上げているのが、人事部門への問い合わせに自動対応するチャットボットだ。メールや電話の応対が減っただけでなく、蓄積したデータを学習することで回答精度が向上。業務効率化と社員満足度向上の両面で効果を挙げている。
そして、因果関係分析。富士通独自のAI技術で、一見関連性のない事象間の因果関係を分析し、人事施策の議論に役立てている。
今後の可能性を感じるのが、人材マッチングだ。社内公募と社員プロファイルをAIでマッチングし、思いがけない適性や可能性を見出す。ただし、これで異動や昇進が決まるわけではなく、あくまでもキャリアカウンセリングの参考資料として活用しているという。
平松さんは、過度なテクノロジー依存に懸念を示す。「AIの学習データには偏りがあります。また、最近はやりの性格診断テストもやり過ぎは良くないと思います。私自身、一番成長したのは相性の悪い上司のもとで働いていたときでした」と笑う。

「人と人との対話から生まれる共感ややりがい、思いがけない化学反応がもたらす成長は、テクノロジーでは代替できません。AIは強力な支援ツールですが、決断を下すのは自分自身。人間の専門性や感性が組み合わさってこそ、本当の価値が生まれるのです」