他ならぬ中国である。筆者が2010年に北京モーターショーを取材した際、中国の自動車メーカーがこぞってBEVのコンセプトカーを大量出品していた。説明プレート上に一様に踊っていたのが、LFPの中国語表記の文字だった。
ハイブリッドカーにまつわるバッテリーメーカーへの技術取材でLFPの知識をある程度得ていた筆者はそれを見て正直、「低性能、低価格のクルマにしかならんだろう」とみくびっていた。
「BYDなんて」とみくびっていたが…
長澤まさみCM車の実力が凄かった
それから十余年、中国の自動車メーカーBYDが日本の乗用車市場に参入した。筆者は、LFP を使ったBYDのコンパクトBEV「ドルフィン」を試乗してみることに。女優の長澤まさみさんがテレビCMをしたことで、一躍その名が知られることになった車種である。
乗る前までは諸元表を見ても、実際のパフォーマンスについては半信半疑だった。が、実際にドライブしてみると同格のBEVをむしろ大きく上回る性能を発揮した。
ドルフィンには標準型(バッテリー容量44.9kWh)と長距離型(58.56kWh)の2グレードが存在する。長距離型で横浜から鹿児島まで1419.6kmを走行したところ、急速充電器を使用しての中継充電に要した時間は30分×4セット=120分だった。
出発後の充電のウェイポイントは、三重県四日市市→兵庫県姫路市→広島県廿日市市→福岡県八女郡広川町→鹿児島市に到達。1000km超のロードテストで走行距離100kmあたりの中継充電時間が10分を切ったのは、超急速充電器ネットワークを持つテスラを例外とすれば初めてだった。
筆者がBEVで横浜~鹿児島を初めて走ったのは、バッテリー総容量40kWhの日産自動車の第2世代「リーフ」だったが、当時の合計充電時間は30分×14回=420分。容量62kWhの「リーフe+」が出てそれが225分となり、強力タイプの充電器が増えたのでもう一度リーフe+で走った時は180分だった。また、72.6kWhの大容量バッテリーを積むヒョンデ「アイオニック5」は150分と、次第に詰まってきた。