声でゴリラのノイローゼを治した?
伝説にふさわしいエピソード
しかしこれだけ幅広い年齢層に指示されている人も珍しい。その理由は何か。
アニメ『ドラゴンボール』は1986~1989年の放送(界隈では「元祖」と呼ばれるらしい)だから、筆者が子どもの頃にリアルタイムで流行ったアニメになるが、世界の歴史に名を刻む伝説的な作品であるし、アニメも『ドラゴンボールZ』といった後続のシリーズに引き継がれていったし、コンテンツとしてはずっと現役であった。『ドラゴンボール』登場以降、悟空の真似(かめはめ波でもなんでも)をしたことのない男子がはたしているのであろうかとすら思われるこの世界線である。特に男子はみんな悟空が大好きで、それはすなわち野沢さんの洗礼を受けているということに等しい。
野沢雅子さんもその間ずっと声優として現役で存在感を放ち続けた。「声優・野沢雅子」としてのメディアの露出に加え、モノマネされることで知名度がさらに盤石なものとなっていた側面もあったかもしれない。
ネットという媒体が登場して情報が広く簡単に行き渡る時代になると、レジェンド声優にふさわしい凄まじさ漂う野沢さんのエピソードの数々は、好んでシェアされるようになった。以下が代表的なものである。
・芸歴85年(2025年現在)で常に最前線。
・自宅がもらい火で全焼し、着ていく服がなかったので近所から服を借りて収録に行き、火事のことをスタッフ・共演者に話すことなく収録を終えた(収録後に話したそう)。なお事情聴取を受けていたため収録には5分遅刻したが、キャリアの中で遅刻はこの時一度きり。
・上野動物園のゴリラのノイローゼがいろいろな治療を施しても治らなかったところ、野沢さん演じる『いなかっぺ大将』の風大左衛門くんの声を聞かせたら治った。
・激しめの収録があっても若手より全然元気。
・「起きてすぐかめはめ波が撃てる」といった発言多数。