どれも野沢さんの超人的なバイタリティを伝える内容であり、親しみを込めて愛されていることが伝わってくる。周囲の人はその突き抜け方と各エピソードから満ちあふれてくる生の波動に、深い尊敬を覚えながら思わず笑ってしまうような、妙だが心地よい気持ちにさせられるはずである。

 すでに生きる伝説的なキャリアが築かれているが、常にめちゃくちゃ謙虚で偉ぶらない。だが別け隔てなく砕けていて、現場で後進が萎縮しないようにフォローに入ることもある。そうした人柄があってか、同業者からの悪口が聞かれない人でもあるらしい。

 とこのように、我々が聞く野沢雅子像は親しみやすい聖人寄りの偉人で、愛されるべくして愛されているキャラクターである。

「お約束」の展開で
ネットユーザーを満足させる

 この野沢雅子さん像がややネットミーム気味に伝えられ・用いられているきらいもある。

 ネットには、多数から面白がられたり興味を持たれたりして共通言語として語られていくコンテンツがある。これがネットミームだ。例えば漫画『ジョジョの奇妙な冒険』作者の荒木飛呂彦先生の数十年経っても若い頃からほぼ変わらない不老っぷりだったり、超イケメンの速水もこみちさんがやけに上空から垂らすオリーブオイルだったりで、これらは好意的に受け止められているネットミームである。

 共通しているのは害意や悪意がないという点である。野沢さんは卓抜したバイタリティが特にネットで愛されていて、尊敬を込めてしばしば「超サイヤ人」と称されることがある。

 これらのネットミームは本人が挙動を更新するたびにみんながキャッキャ言って喜び楽しむ流れができている。お笑いやドラマなどで、期待通りの展開を見せて視聴者を満足させる「お約束」というのがあるが、あれに近い期待をネットユーザーはミームに抱いている。そしてその期待感が満たされると、人気はさらに確固たるものになっていくのである。