「部下の感情を無視するリーダーは嫌われます」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」に共通する時代遅れな文化や慣習があると気づきました。
それを指摘したのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』。社員、取引先、お客様をうんざりさせる「時代遅れな文化」を指摘し、現場から変えていく具体策を紹介。「まさにうちの会社のことだ!!」「すぐに実践してみます!」と、とくに現場リーダー層を中心に多数の反響があり話題に。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「部下が辞めないリーダーの特徴」を紹介します。

「仕事に感情を持ち込むな」と言うリーダーは嫌われる。では、優秀なリーダーはどう言う?Photo: Adobe Stock

感情を否定する組織

 仕事の場面で感情を表現するなんて大人げない。

 こういった価値観や文化が強い職場や、それを押し付けるリーダーが存在する。

 組織や仕事とはいえ、それが人の営みである以上、そこに生じる感情の存在は否定できない。

 感情を無視しては良い関係構築もできず、良い仕事もできない。なぜなら我々は機械ではないのだから。

 あなたの組織はどうだろう。個人的な感情を表に出すことが悪とされ、無視され、ルールや数字、上からの指示遂行ばかりが重視されていないだろうか。

ウェルビーイングを大切にする

 ウェルビーイング(Well-being)なる概念も社会に浸透しつつあり、取り組む企業も増えている。

 これは身体的および精神的、社会的、経済的に良好で満たされている状態にあることを意味する概念である。CHO(Chief Happiness Officer)など、従業員のウェルビーイングを高める専門職を設ける企業もある。

 経営者としても関心の高いテーマであるため、その課題解決に絡めてウェルビーイングの重要性、ひいては感情を示し、向き合う大切さを説明してもよいだろう。

「本当のところは?」で感情を引き出す

 あなたの周囲の人に感情を出してもらうことも重要だ。
 
第一歩として、まずはあなたの感情を正直に出した上で、こう聞いてみよう。

「○○さんも、本当のところはどう思っているんですか?」

 建前としての意見の存在は理解した上で、それとは切り離して「本音を聞いています」と伝えてみる。

 もちろん、そうやって吐露してくれた相手の感情は、完全に極秘。その場だけの話にとどめよう。万が一にでも他者に知れ渡ったら、あなたの信用が失われるだけでなく「感情や本音を言ってはいけない」と警戒する組織に逆戻りだ。

 感情を持つこと、感情を適切に表現することは良いことである。まずはその発想をあなたの職場にインストールしよう。
 感情的にならずに、感情を添えるアサーティブ・コミュニケーションなどの技法もある。そのような技術を皆で学ぶのもよい。相手の感情を大切にする(リスペクトする)発想や文化を、あなたの職場でも育んでいこう。

(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。書籍では他にも、「人が辞めない組織にするためにできる具体策」を多数紹介しています)