
小泉信一 著
「失楽園」を演出した映画監督の花堂純次は、あの激しいラブシーンの場面をこう振り返った。
「『私は撮影に入ると必ず本気で恋をするの』と言っていましたね。睡眠時間を削るくらいハードな撮影でしたが、『ワインを飲んで自分をもたせている』とほほえんでいました」(「週刊朝日」2015年10月9日号)
美しいだけの女優ではなかった。美しさの中に「精神の糸」のようなものがピンと張り詰めていたと言ってもいいだろう。
「女優は一生をかけてやる仕事。命ある限り表現していきたい」
取材に対し、川島は真剣な眼差しでこう応じていたが、女優としての目標は自分自身を超えることだったのだろう。穏やかな風景が続く一本道ではなく、曲がりくねった道のような芸能生活。山あり、また山あり。山を越えたら次の山が待ち構えており、その山に登って、さらなる景色を見る。「別の景色が見えたらチャンスありと思ってきた」と川島は語っていた。
さて、ここからは私の個人的な見解だが、川島にはどんな色が似合ったか考えてみたい。生命の色である赤やバラ色はたしかに似合う。大地を彩る黄や緑もシックな感じがして似合う。だが私は、青色こそ川島にとって最も似合う色だと唱えたい。
青は大空を彩るように気高い。そして時には、人間を激しく拒む。画家のパブロ・ピカソ(1881―1973)も孤独で不安な青春期を青色で表現したが、暗く沈んだ色調の青こそ女優・川島なお美にふさわしい。晴れ渡った春の青空を見上げつつ、彼女に思いをはせる。