さて、これまでマツダの新戦略について述べてきたが、今後マツダの業績について気になる点が2つある。米国での利益減少とトランプ関税の影響だ。

 24年のマツダの米国販売は、前年比17%増の42万台で38年ぶりに過去最高を更新した。米国ではかねてブランド改革を進めており、新世代店舗への一新や脱・安売りのほか、デザイン面の差別化などが浸透してきた。そこにラージ商品群の新型車が躍進したことで利益率も高まり、今やマツダの営業利益の約5割は米国が占めるほどだ。

 ただし、25年4〜12月期連結決算は、世界販売台数が前年同期比4%増の96万6000台で、その半数を占める北米向けは22%増、米国・メキシコでは同期として過去最多を更新したものの、営業利益は販売奨励金(インセンティブ)が膨らみ26%減の1483億円にとどまった。25年3月期通期予想は、全社の売上高が前期比4%増の5兆円だが、純利益は33%減の1400億円を見込む。

 主力の米国のインセンティブの増加傾向は落ち着きつつあるといい、ジェフリー・エイチ・ガイトンCFO(最高財務責任者)は、「米国のインセンティブを抑えてもマツダ車販売好調は続いている」としているが、業績に一抹の不安が残る状況でもある。

 さらに、マツダにとって大きな経営課題として立ちはだかりそうなのが、米トランプ政権の関税問題だ。

 マツダは、14年からメキシコ工場の操業を開始しており、同社にとってタイ、中国、米国をしのぐ最大規模の生産基地となっている。昨年2月のメキシコ工場操業10周年記念イベントで、毛籠社長は「北米販売台数の3分の1がメキシコ工場製であり、北米市場を支えている」と述べている。