ライトアセット戦略の効果として、具体的には、インフレの影響で約2兆円程度まで膨らむ見通しとなっていた30年までの電動化投資を、協業なども活用しながら約5000億円抑えて1.5兆円程度とする見通しを発表。さらに、バッテリーEV(BEV)・エンジン車(IEC)を混流生産することで、BEV専用工場を新設する場合と比較して、初期設備投資を85%低減、量産準備期間も80%低減する方針などを明らかにした。

 マツダは、2030年までを“電動化の黎明(れいめい)期”と位置付けて、ICEやBEV、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)などをマルチに提供する「マルチソリューション戦略」を展開している。

 例えば、“内燃機関車のフロントランナー”であるマツダならではの技術として、高い熱効率を実現した新開発「SKYACTIV-Z」エンジンとマツダ独自のハイブリッドシステムを組み合わせたモデルを、27年中に次期「CX-5」として投入する。これは、欧州ユーロ7や米国LEV4、Tier4といった厳しい排ガス規制に適合するパワーユニットで、その燃焼改善技術は、「ラージ商品群」(大型車種の商品群)にも展開され、さらにロータリーエンジンのエミッション開発にも活用される見通しだ。

 また、BEV開発については、直近で中国・長安汽車と共同開発した「EZ-6」を24年に投入しているものの、自社開発のEV専用プラットフォームの開発も進めている。進化し続ける電池技術の動向を踏まえ、さまざまなタイプの電池が搭載可能で、派生した車型も生み出せる高い柔軟性を持ったプラットフォームを開発。走らせて楽しいマツダらしい「人馬一体の走りのBEV」の実現を進める方針だ。

 マツダは5.1%を出資するトヨタ自動車と資本提携を結んでおり、米国生産合弁会社の設立やEV技術の共同開発などの連携を進めている。一方で、自前の電動化施策も“メリハリ”を利かせながらマルチソリューションで進めていく方針でもある。つまり、今回発表したライトアセット戦略は、投資余力の少ないマツダがマルチソリューションを展開するための土台となる、極めて重要な施策になるのだ。

毛籠社長が進める
電動化戦略の深化

 マツダの毛籠社長は23年6月に就任して3年目を迎える。営業・マーケティング畑の出身で、特に米国でのブランド改革を推進してきた実績を持つ。

 その手腕にたがわず、毛籠社長はこれまで電動化戦略として大胆な手を打ってきた。23年11月に技術の開発や商品企画を一体的に行う「電動化事業本部(e-MAZDA)」を設立したほか、24年2月には電動車への搭載を念頭に、ロータリーエンジンを開発する「RE開発グループ」を復活させている。