半個室の料金はグリーン席の3倍超?
次世代車両ではさらに上級座席の可能性も
JR東海は3月19日に発表した「JR東海グループの『ありたい姿』~30年後の未来に向けて~」の中で、「コロナ禍を経ての再出発」として、新しい多様なサービスの提供により収益を拡大し、経営体力の再強化を図るとしている。
すでに号車単位の貸し切りやオリジナルイベントなどを実施できる「貸切車両パッケージ」や、3人掛け席の中央にパーティションなどを設置し、ゆとりをもって作業ができる「S work Pシート」を設定しているが、それに続く「本命」が上級クラス座席だ。
JR東海は利用者へのアンケート調査を通じて、より上質な座席やプライバシーやプライベート感を重視する座席を導入してほしいというニーズが大きいことが明らかになり、個室タイプと半個室タイプを合わせて導入することになったと説明する。
個室については、2026年秋以降に投入されるN700S「3次車」17編成は可能なものから新造時に、また、導入済みの「2次車」19編成は改造することで、計36編成に設置される。JR東海が保有する車両は計131編成なので4分の1強、JR西日本が保有する車両も含めれば全体の2割程度の設置になるが、今後の車両更新で徐々に増えていく形になるだろう。
なお、JR西日本に聞いたところ、現時点では同社が保有する車両に上級クラス座席を設置するかは未定で、検討中とのこと。ただ、山陽新幹線の東海道新幹線直通用車両は、基本的にJR東海の車両と同一設計であることを踏まえれば、今後はJR西日本にも上級クラス座席を設置したN700Sが登場すると思われる。
半個室についても「2次車」以降の36編成に設置予定で、設置準備が間に合う編成は新製時から設置、間に合わない編成は検査などのタイミングで改造工事を行い、順次拡大していくという。
個室、半個室のサービス内容や名称、運転区間、料金などは現時点では未定だが、半個室6席は、従来のグリーン席20席分のスペースが充てられることから、単純計算でグリーン席の3倍以上の料金にならなければ減収になってしまう。個室は業務用スペースを転用するため既存の座席は減らないが、当然、半個室より高額になるだろう。
今後、東海道新幹線のサービスはさらに多様化していくだろう。開業時期は見通せないが、リニア中央新幹線が全通すれば、東海道新幹線の輸送力にはさらに余裕が生じる。

一方、人口減少社会が本格化すれば利用者は減少傾向に転じるので、収益を確保するためには利用者の単価を増やすしかない。前出の「ありたい姿」は、次の30年を見据えた対応として「提供するサービスに見合う価格設定による収益の確保」を掲げている。
東海道新幹線の車両はおおむね13年で更新するため、2040年代以降に登場する次世代車両では、富裕層やインバウンド需要を意識した、さらにハイグレードな座席の設定や、食堂車やカフェテリアなどの供食サービスの復活もあり得るかもしれない。
JR東日本は2030年度に導入する東北新幹線の次世代車両「E10系」に、座席にゆとりを持たせたテレワーク向け車両「TRAIN DESL」を導入すると発表した。JR東海の上級クラスの座席設定が、各社の新たな座席サービスの開発を刺激することに期待したい。
3ページ4段落目「JR東海が保有する車両は計135編成なので4分の1」→「JR東海が保有する車両は計131編成なので4分の1強」
(2025年4月2日 14:00 ダイヤモンド・ライフ編集部)