話がヘタな人は「情報だけを伝える」。じゃあ、話がうまい人はどう言う?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか? この連載では、「顧客ロイヤルティ」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介しましょう。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

いい伝え方とは?
「説明しているのに、あまり響いていないな…」
取引先や個人のお客様に対して、そんな経験をしたことはありませんか?
これは、ある旅行会社を利用した人の話です。
新婚旅行に出かけるため、ホテルの案内を受けていたところ、「オーシャンビューの部屋です」と聞かされても、「ふーん、でも、海なら日中の観光でいつでも見られるし」と、気持ちが動かなかったとか。
ところがその後、「朝、カーテンを開けると、目の前には朝日がキラキラと反射した海が広がっているんです。そんな景色を、お二人だけでゆっくり楽しめるお部屋なんですよ」と伝えられたら、一気に興味が湧いたと話していました。
ただの説明から「体験」へ
心が動いた理由――それは、単なる事実ではなく、そこには部屋から得られる価値が「ストーリー」として伝わったからだと思います。
情報をただ伝るだけではなく、まるで自分がその場にいるかのような情景を思い描ける言葉が加わることで、人の心は強く惹きつけられることがあります。
例えば、同じ商品でも、
「このコーヒーは特別な豆を使っています」
「このコーヒーは、標高1500メートルの農園で朝露を浴びながら育てられ、丁寧に手摘みされたものなんです」
どちらのほうが、印象に残るでしょうか?
後者のほうが、そのコーヒーを味わってみたくなりませんか?
ストーリーを使うことで、情報はただの説明から「体験」へと変わります。
人は数字やスペックだけではなく、情景や感情に強く反応するからです。
もちろん、相手のタイプや好みによって、ストーリーが響くかどうかは変わります。
でも、もし相手がなかなか関心を持ってくれないと感じたら、事実を伝えるだけでなく、ストーリーを織り交ぜてみるのがおすすめです。
ストーリーは、単なる情報を「相手の記憶に残るもの」に変える力を持っています。
(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が書き下ろしたものです。)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。