「まさか、息子が…」幹部に抜てきされた親族が会社を混乱させるまで
仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつマネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【失敗する事業承継】“親の情”だけで選んだ後継者の末路Photo: Adobe Stock
北条高時(1303~1333年)は、鎌倉幕府の北条得宗家(本家)当主、執権(事実上のトップ)。同じく執権を務めた北条貞時(1271~1311年)の息子として生まれ、北条家の跡とりとして育てられたものの、9歳で父・貞時は亡くなる。その後、3代にわたって親族が中継ぎの執権を務めた後、高時は14歳で執権に就任。10年ほど執権を務めたが、病気のため辞した。その後、鎌倉幕府打倒を掲げた後醍醐天皇(1288~1339年)を一度は鎮圧するも、天皇の再起により各地の武士が立ち上がったことで、鎌倉は攻められ、幕府は滅亡する。

親族がリーダーに選ばれる現実

 同族会社の経営者や、当選に必要とされる3バン(地盤・看板・カバン)が整った政治家の後継者として、「親族」があてがわれることは少なくありません。

 しかし、リーダーの資質がともなわないケースも、少なからず見受けられます。

息子を幹部に抜てきしたが……

 あるクライアントの経営者は息子を経営幹部に抜てきしたものの、その息子は誰よりも遅く出勤し、誰よりも早く退社するという働きぶりで、社員たちのひんしゅくを買い、まったくリーダーシップを発揮できずにいました。

責任感の欠如が破綻を招く

 経営者候補として育てようと大きな仕事を与えても、責任感がともなわず、最後はいつも逃げてしまうありさま……さすがの経営者も、息子への事業承継を断念せざるを得ませんでした。

北条高時の二の舞になっていたかもしれない

 もし、息子の頼りなさに目をつむったまま、事業承継していたら、北条高時と同じように現場が混乱し、これまで築き上げてきた会社組織が瓦解していたかもしれません。

名リーダーに共通する「勤勉」という資質

 長い歴史を振り返ってみても、名リーダーと評される人は、ほぼ例外なく勤勉な資質を備えており、自分の目の前の仕事に真面目に向き合っています。

後継者に必要なのは「情」ではなく「資質」

 言うまでもありませんが、後継者の選定にあたっては、“親族としての情”より、リーダーとしての資質を備えているかどうかをよく判断する必要があります。

※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。