「変化の時代に、どう生きるか?」この問いに答える一冊が、アメリカでベストセラーとなった『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』だ。本書の著者、ブラッド・スタルバーグはマッキンゼー出身であり、ウェルビーイング研究の第一人者だ。本稿では、本書の中から「すぐ焦る、すぐ不安になる人にに欠けている視点」に焦点を当て、不確実な時代の波に飲まれず、自信を持って行動し続けるための方法を探る。自分らしさを貫き、世の中の変化を味方につけるには何が必要なのか。その答えを、本書の知見とともに紐解いていく。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

不安や心配が止まらない人の根本的な共通点
たとえばこんな場面に心当たりはないだろうか。
新しいプロジェクトを任されたけれど、自分にできるかどうか不安で仕方ない。
他人からちょっとしたミスを指摘されただけで、「やっぱり自分には向いてないのかも」「どうすればいいのかわからない」と一気に不安に襲われる。
周りがどんどん前に進んでいるように見えて、自分だけ取り残されている気がする。
こうした焦りや不安を抱えている人に共通しているのは、「これから先、何が起きるかわからないこと」への過敏さだ。
そして実は、こういうときに欠けているのが、ある一つの視点。
それが、「自分なら変化に対応できる」という感覚。これを自己効力感と呼ぶ。
自己効力感とは、困難のさなかでも、自分は現実と向き合って意図的な行動を取れるはずだという、実体験に基づいた信念から生まれる確かな自信のことだ。過去数十年の研究結果からも、自己効力感が高い人のほうが過渡期や混乱期をうまく切り抜けることがわかっている。
――『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より
すぐに反応する人vs主体的な行動をとれる人
焦りや不安の正体は、「予期せぬ状況を前にしたとき、自分ではどうにもできない」と思い込むことにある。こうした状況を、自分に対する脅威だと受け取ってしまうのだ。
変化に対応する自信がない人は、すべてをコントロールしなければならないと思い込み、変化を脅威と感じてしまう。物事をコントロールできないと感じると、人はつい自動的に反応してしまう。
しかし、自分なら変化に対応できるはずだと自信が持てれば、徐々に平静を保てるようになる。
――『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より
感情に支配されていると、人はよく考える前に反応してしまう。すぐにパニックになり、焦りから動いてしまうため、結果的に状況が悪化することもある。
このような「反応」してしまう人は、以下の“2つのプロセス”で行動する傾向があると、本書は指摘している。
(1)パニックになる
(2)前進するために闘おうとする
つまり、焦りからくる「自動的な反応」が先に立ってしまい、状況を見極める余裕がないのだ。
では、どうすれば落ち着いて行動できるようになるのか?
本書では、感情的な反応を避け、より主体的に行動するための“4つのプロセス”が紹介されている。
(1)間を置く
(2)状況を整理する
(3)計画を立てる
(4)進む
この4段階のプロセスを意識することで、私たちは自動的な反応ではなく、「選択に基づいた行動」ができるようになる。
最初の「間を置く」ことで感情の波に飲まれず、冷静さを取り戻す。次に、状況を客観的に見つめ直し、できることとできないことを仕分ける。そして計画を立て、ようやく前に進むのだ。
この土台になるのが、まさに「自分には対応できる」という自己効力感。
変化の時代をしなやかに乗り越えていくためには、自分を信じる視点こそが、もっとも重要な武器になる。
※本稿は『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』の内容を一部抜粋・編集したものです。