訪問介護の黒字率は
本当に高いのか?
厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要」によると、2022年度決算で訪問介護の収支差率はプラス7.8%と、通所介護(プラス1.5%)、介護老人福祉施設(▲1.0%)に比べ、高い黒字率となっている。
だが、これは訪問介護の全体状況を示した数値とは言い難い。実態は、移動時間が短時間で同じ建物内を訪問する大手事業者が収支率を押し上げているとの指摘が少なくない。一方、地方の事業者などは、離れた一軒ごとに訪問するためコスト高に見舞われ、マイナス改定の影響も大きく受けている。こうした事業者が倒産に追い込まれているのだ。
また、訪問介護を含む介護職員の2024年9月の平均給与は33万8200円だが、全産業平均と比べると約8万3000円低く、人材獲得は容易ではない環境が続いている。
81件の倒産のうち
民事再生はわずか1件
2024年の訪問介護事業者の倒産81件(負債1000万円以上)を原因別でみると、最多は売り上げ不振(販売不振)の66件(前年比22.2%増)で、赤字累積が8件(同700.0%増)で続く。形態別では、破産が80件(同19.4%増)を占め、残る1件は民事再生法だった。業績低迷に陥ると再建型の手続きが難しい構図が浮かび上がる。
規模別では、資本金1000万円未満(個人企業他含む)が70件(構成比86.4%)、負債額1億円未満が74件(同91.3%)、従業員数別は10人未満が77件(同95.0%)と、大半が小規模事業者だったことがわかる。
業歴別では、最多が10年以上30年未満の36社(構成比44.4%)で、10年以上は40社(同49.3%)とほぼ半数を占めた。一方、5年未満は20社(同24.6%)と業歴の浅い企業も4分の1あり、業歴を問わず苦境に見舞われている。