ロシアからの撤退で
身ぐるみ剥がされた日産

 ロシアに対し、G7諸国をはじめとする西側諸国は経済制裁を段階的に強めていった。米国やEUは、軍事転用可能な先端技術品目やロシアの産業基盤強化に関連する品目の輸出禁止、エネルギー(原油や天然ガスなど)や鉱物資源の輸入禁止など、段階的に対象を拡大していった。日本もこれら諸国と協調し、同様の措置をとっている。これらの措置は、中国やインドなどの第三国企業を通じた迂回輸出の禁止へと強化されている。また、ロシアの金融機関を国際決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)システムから排除する金融制裁も科している。

 こうした西側諸国による対ロ制裁もあり、ロシアから撤退したり、事業を一時停止したりする日本企業も少なくない。ジェトロが2024年2月に実施したアンケート調査によれば、「撤退済み・撤退の手続き中」が1社(1.6%)、「全面的な事業(操業)停止(いわゆる休眠を含む)」が16社(25.4%)、「一部事業(操業)の停止」が22社(34.9%)、「通常通り」が22社(34.9%)となっている。

 撤退には、資産売却時に当局の許可が必要なのに加え、売却価格を市場価格の40%以下とすること、市場価格の35%以上を政府に納付するなどの厳しい条件がある。撤退企業が納付金を支払う場合、最大でも市場価格の5%しか手元に残らないことになり、撤退の決断は容易ではない。日産自動車は2022年10月、ロシアの現地製造子会社を1ユーロで売却し、事業撤退に伴う特別損失1105億円を計上した。

米中対立が激しさを増すなかで
日本製品の対中輸出も困難に

 短期間の自然災害や地域紛争など、サプライチェーンの混乱が一時的なものであれば、原因が取り除かれて原状に復することが期待される。しかし、事業の撤退や継続不能など、混乱が中長期的に続くことが想定される場合は、サプライチェーンの再編が必要となる。

 日本企業が直面しているその最たる例が米中対立の常態化だ。米中対立は、一時的な緩和と激化を繰り返しながら、中長期的に続いていくとみられている。また、米中対立は、民主主義諸国と権威主義諸国の対立へと戦線が拡大している。日本を含む西側諸国は、中国に対する経済的・技術的優位性を確保し、軍事転用可能な機微技術の中国への流出を防ぐため、輸出管理や投資審査を強化している。その結果、日本企業の中国ビジネスに制約が生じている。