米国は、先端半導体やその製造装置などの機微技術・製品を中心に、輸出管理品目を拡大したり、規制の厳格化を進めたりしている。特に、日本企業から懸念の声が上がっているのが、外国直接製品規則(FDPR)の適用拡大だ。同規則は、米国外、例えば、日本国内で製造された製品でも、その製造過程で特定の米国製技術・ソフトウエアを用いている場合には、米国の輸出管理の対象になるというもので、同製品を日本から中国に輸出する場合にも米当局の許可が必要となる。

 同規則は、2020年5月にファーウェイ向けに適用されたが、同志国から機微技術・製品が中国へ輸出されるのを防ぐため、米国はこの適用の拡大に動いている。2022年10月の先端半導体・スーパーコンピューター関連の対中輸出管理強化では、対象製品に同規則が適用され、2024年12月にも対象が高帯域幅メモリ(HBM)などに拡大された。

レアアースの輸出制限を
対日外交カードに使った中国

 輸出管理法令に基づき、国家安全保障や外交政策上の懸念があるとして、輸出などの取引が制限される企業を列挙した「エンティティー・リスト」(編集部注/米国商務省産業安全保障局が発行している貿易上の取引制限リスト)への中国企業の追加も相次いでいる。米商務省の発表によれば、バイデン政権は2024年5月までに歴代政権で最多となる355の事業体を追加し、同年12月には新たに140の事業体を追加した。これら企業との取引は、米輸出管理法令の対象となる場合があるので、注意が必要だ。

 西側諸国は、中国による経済的威圧への耐性を高め、重要物資の安定供給を確保するため、輸入制限や関税の賦課、調達先の多様化によって中国への依存度の引き下げを目指している。同時に、単に輸入相手国が中国から他国に替わるのではなく、国内生産によって自律性を高めようと、政府主導の産業政策による国内製造基盤の強化や、国内企業の保護・育成や外資誘致を積極的に進めている。その主な対象は、半導体などの機微技術や、蓄電池などの脱炭素関連技術だ。