下のきょうだいに嫉妬をして
達成したい「目標」とは?

 王座転落の経験が後の嫉妬のきっかけになったことをここまで見てきました。誰もが同じ状況で王座から転落したと思うわけではありませんが、そう思った子どもは親やきょうだいに嫉妬するようになります。なぜ嫉妬するのでしょうか。嫉妬することでどんな目標を達成しようとしているのでしょうか。

 アドラーは、次のようにいっています。

「子ども時代にはきょうだいが他のきょうだいよりも優るために、野心と共に、このような嫉妬も自らの内に発達させ、そうすることで、敵対的で闘争的な立場を示す。冷遇されていると感じることから、他の形の野心が発達する。これが嫉妬であり、しばしば人間に生涯にわたってまつわりつくことになる」(『性格の心理学』)

「敵対的で、闘争的な立場を示す」のは、王座から転落して冷遇されたと感じたからですが、最初から必ずそうなるわけではありません。しかし、弟や妹が生まれ、自分をめぐる状況が変わったことはすぐに感じるので、親の愛情を自分に向けるために、状況の変化に対処しなければならないと思います。

 そこで、何としても他のきょうだいに優り、親に認められなければならないと考え、最初は手伝いをしたりするなどして、いい子になって親にほめられようとします。また大抵の親は、子どもが言葉を覚えるのが早かったり、数の計算ができたりすると、この子は頭がいいなどといってほめるので、一生懸命勉強して親に認められようとすることもあります。

 しかし、いつもほめられるわけではなく、弟や妹の面倒をみるように頼まれても、大泣きさせたり、何か失敗した時に親に叱られることがあります。勉強をして親に認められようとした子どもも、いつまでもいい成績を取れるとは限りません。兄や姉が時間をかけ努力してようやくできるようになったことを弟や妹がやすやすとできるようになると、多くの親はほめます。

 このようなことがあると、自分が不当に扱われていると感じた子どもが他のきょうだいに敵対的で闘争的になるのです。