山口 また、台湾にとって中国は輸出入とも最大の貿易相手で、多くの人やモノが往来しています。もっともこの経済的な繫がりがあるからといって、衝突を抑えることはできません。

 この難しい状況が関係して、台湾では、統一、独立、武力行使に反対する「不統、不独、不武」の現状維持が圧倒的支持を得ています。問題は、中国がこれを台湾による統一の拒否、独立への第一歩と認識していることです。

 今までの非軍事的手段は効果がなかった、平和統一は事実上不可能で、武力行使はやむを得ないと自覚しているようにも見えます。可能な限りあらゆる手を使って台湾に影響力を及ぼし、いずれは武力で台湾軍を制圧し、台湾を占領しようとするのではないでしょうか。

小泉 非軍事的手段だけで統一を行おうとすると、効果が出るのが遅くなりますし、効果が出ない場合もあります。即効的に成果を挙げようと思ったら、軍事力を併用するか、全面戦争を仕掛けるかとなります。ここまでにいくつか出たシナリオは、ひとつながりのスペクトラムとして存在しているのかもしれません。

 どれを選ぶことになるかは、ここで議論してもわかるものではありません。これは2022年以来、私はずっとそう思っています。プーチンが合理的に行動するだろうという前提が当たらなかったからです。彼は合理的に行動しているのだろうが、彼の合理性は我々の合理性と同じ基準ではなかったのです。

米中が全面戦争に突入すれば
沖縄、九州の基地が攻撃される

小泉 米中が全面戦争に突入した場合、沖縄にある日米の基地が攻撃されるのは明らかです。

 私が中国の人民解放軍だったら、まず沖縄と九州一帯の基地、とりわけ航空戦力を叩きます。

 戦争が始まりそうになった時点で、動ける船はすべて海に出ているでしょう。問題は飛行機です。飛行機は基地がなければ動き続けられません。だから中国は早い段階で、日本にある米軍と自衛隊の飛行場を叩こうとするでしょう。台湾に対しても同様です。フィリピン、グアムの基地も狙うでしょう。

 沖縄本島には、自衛隊の那覇基地、米軍の嘉手納基地があります。九州には戦闘機の基地が福岡県の築城と宮崎県の新田原にあります。あと山口県の岩国基地には、米海兵隊の戦闘機部隊がいますし、青森県三沢の米空軍基地も叩きたいでしょうね。