「休み明けに『涙が出るほど会社に行きたくない』。その憂鬱感を和らげる、精神科医の処方箋とは?」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

休み明けに「涙が出るほど会社に行きたくない」。その憂鬱感を和らげる、精神科医の処方箋とは?Photo: Adobe Stock

涙が出るほどつらい?

 ゴールデンウィークという大型連休が明け、いつもの日常が戻ってきましたね。

 しかし、なんだか気分が晴れなかったり、「会社に行きたくない」という気持ちが強すぎて、理由もなく涙が出てきたり…。そんなつらい思いをしていませんか?

 こんなふうに連休明けに憂鬱を感じるのは、じつは人間だとどんな人でも起こる生理的な反応ということはご存じですか?

 行きたくない気持ちがあまりに強かったり、涙が出るほどつらかったりするのは、そんな「心からのSOSサイン」かもしれません。

 今日は、連休明けに行きたくないと感じる理由。そんな連休明けの憂鬱感を少しでも和らげ、スムーズに日常のペースを取り戻すためのヒントについて共有したいと思います。

連休明けがつらい理由

「休みボケ」という言葉は耳にしたことがあるかもしれませんが、人間が連休の明けになると行きたくないと感じやすい原因はいくつもあります。

1. 体内時計のズレ
 休日はダラダラできても、連休明けには正さなければいけません。連休中に乱れた生活リズムが、平日のだるさや気分の落ち込みを引き起こします。体が日常モードに戻りきれていない中での急発進は大きな負荷を起こします。

2. 解放感とのギャップ
 自由で楽しい休日時間から、規則やタスクに縛られる平日時間への切り替えは心に大きな負担をかけてしまいます。人間は自由をこよなく愛する動物だからこそ、平日の緊張感とのギャップにやられてしまいます。

3. 責任感のプレッシャー
「連休明けからまたバリバリ働かないと」「しっかりしないと」という「~すべき思考」が、自分自身に過剰なプレッシャーを与えてしまい、自分をさらに追い詰めてしまいます。

4. 隠れていたストレスの再燃
 仕事や職場環境に抱えているモヤモヤとしたストレス。連休で一時的に解放されていた問題が、再び重くのしかかってくるように感じてしまう。そんな重みは休による開放感から一時的に離れていたぶん、余計に重く感じてしまうようになります。

 こうした要因が重なり、「涙が出る」ほどの強い反応が起こります
 そんな涙という生理的な反応も、心が限界に近いことを知らせているサインかもしれません。

「行きたくない」気持ちとの上手な向き合いかた

 どうしても湧き上がる「行きたくない」という気持ち

 それはあなたの心の弱さではなく、生死的に起こる、人間としての本能のようなものかもしれません。

 その気持ちが起こること自体を否定する必要はありません。

 まず大切なのは、そのネガティブな感情を無理に抑え込もうとしたり、「こんなこと感じてはダメだ」と否定したりしないことです

「行きたくない」と感じること、否定的な感情そのものが悪いのではないと、自分の内側で起きていることを、批判せずにただ認めてあげる。

 そう受け止めることで「そう感じるのも無理はない」と自分自身に優しさを向けることができるようになります。

 あなたが精神的な苦痛を感じていること、それを受け入れることが苦痛を和らげる第一歩になるのです。

 その上で、モヤモヤとした気持ちやストレスを具体的な言葉にして書き出してみることで自分の客観視につながります。

 何がそんなに嫌なのか、何が不安なのかをノートに書き出すなどして言語化すると、脳の感情的な反応を司る部分の活動が落ち着き、少し冷静になれるという研究もあります

 漠然とした不安が明確になることで、客観的に状況を見つめ直し、対処の糸口が見えてくるかもしれません。

 さらに、行動にうつす際には「小さな報酬」を意識して、達成できたことを自分で認めてあげることが重要です。

「朝、時間通りに起きられた」「家を出られた」といった本当に小さな「できた」で構いません。

 こうした「なんとなくできた」という体験を経るうちに段々と日常になっていくのです。

もし、涙が止まらなかったら

 連休明けの「行きたくない」という憂鬱は、多くの人が経験するものです。

 そんな涙も平日に戻るときのギャップによって起こっているのかもしれません。

 ですが、日常に戻るうちに、慣れていくことであなたの気持ちも落ち着いていくかもしれません。

 自分を責めずに、「そういう時期」と受け止めること、その上で「なんとなくできた」を繰り返しながら、少しずつ日常のペースを取り戻していきましょう。

 何よりも、無理しすぎないことが大切です。あなたの心が少しでも軽くなることを願っています。

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。の著者・精神科医いっちー氏が書き下ろしたものです。)

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。