以上のようなことは、気がつくたびに直接スーパーバイザー(SV)に伝えてきた。

 だが、一向に声が届いているようには感じられなかった。ちゃんと上に伝えていないのではないかと疑って、問い質したり、彼らの上司にあたるエリアマネージャーに申し立てたこともあった。それでも変わらなかった。

 業を煮やして、ある日、加盟店相談窓口*へ苦情の電話を入れた。

「SVに言っても、エリアマネージャーに言っても、全然改善されないから電話してるんですが、私、長年、腹に据えかねてて、もしかしたら、話してるうちに、口汚く怒鳴りつけるかもしれないけど、窓口のあなたに対して言ってるわけじゃないですからね。しっかり録音して、ちゃんと伝えるべき部署へ伝えてくださいね」

 あらかじめそう断って、ネーミングの改善をお願いした。

 それからしばらくして難しい漢字にルビがつくようになった。私の抗議が通じたのか、それともほかの加盟店からも同じような声があがったのか、それともたまたま偶然なのか、真相はわからない。

 ――30年の怨念が嵩じて愚痴っぽくなった。お許しいただきたい。

書影『コンビニオーナーぎりぎり日記』(三五館シンシャ)仁科充乃『コンビニオーナーぎりぎり日記』(三五館シンシャ)

 それでも「嫌い、嫌い」で店を長くは続けられない。いつのまにか私は心臓に毛が生えたようになって、初めてのお客にも平気で話しかけるおばさんになっていた。お客と仲良くなり、常連さんとは家族のような口をきき合う間柄となった。パートさんもバイトの子たちも本当に大きなファミリーのようだ。そう思えば、こういう場を与えてくれたファミリーハートにも感謝の思いが湧いてくる。

 ファミリーハートはこれまでもどんどん変わってきた。

 2017年の「展示会*」のことだったと記憶している。当時の社長のビデオメッセージが上映された。

「少しでも店の負担を軽減するよう、さまざまなことを見直し、細々としたことでも変えていく」という宣言があった。そして実行に移してくれた*。以来、次々出されていた細かい指示はパタリと止んだ。

 ファミリーハートは、大手コンビニ3社の中で、唯一の日本発祥店だ。