現在、その分譲地は東西に横切るように県道が貫いており、分譲地は県道を挟んで南北に分断されている。
北側部分は比較的広く残ったのでその後も家屋の新築があり、現在も住宅地として利用されているが、歪な三角形の形で残ってしまった南側部分は、その大半が雑木林と化して放置されている。
僕が購入した私道部分も、一応アスファルトで舗装されてはいるものの、新たに築造された県道とは高低差もあり、歩道もあるために直接県道には繋げられていない。車両の通り抜けもできない、狭い袋小路として放置されている。
住民にとっての特殊事情は
登記上には反映されない
分譲地の所有者や住民にとって、私道の持分や負担分、分割所有分は宅地部分と不可分のものであり、その住宅地・分譲地を利用するうえでの不文律ともなる。
しかし登記上は、その宅地部分と私道部分に紐付けがあるわけではなく、あくまで別々の独立した登記=所有権として扱われる。私道を巡る合意などが登記に反映されるわけではない。

吉川祐介 著
そのため、道路用地として買収する場合、それによっていくら私道部分だけが残ってしまうとしても、道路用地から外れた筆は不要なので買い取ってもらえないのだ。
買収の対象はあくまで予定地のみであり、分譲地の住民や所有者間の不文律など考慮されないのだ。そのため、宅地部分はすでに買収済みなのに、たった3坪しかない私道だけが手元に残されてしまうことも普通に起こりうる。
近年の住宅分譲地の私道では、あまりこのような分割共有の形はとられていないと思うが、宅地と私道は同時に取引しなくてはならない決まりはどこにも存在しない。
不動産販売ではしばしばこのような、登記上の所有権だけではカバーできない拡大解釈が横行するのである。