ソフトウェア企業Be My Eyesの最高技術責任者イェスパーは、米国で急成長を遂げたデンマーク発のソフトウェア企業ゼンデスクで10年以上働いていた経歴も持つ。ゼンデスクのコペンハーゲンオフィス立ち上げを担当し、200人以上の開発者をまとめるチームリーダーも務めていた。

 リーダーとしてプロジェクトを成功に導くための秘訣について尋ねてみると、こう答えてくれた。

「リーダーにとって一番大切な能力は『聞く力』じゃないかな。リーダーはとにかく自分の口を閉じて、相手の声に耳を澄ませた方がいい。みんなの意見を聞けば聞くほど、リーダーとして的確な判断ができるから」

 メンバーには、色んなタイプの人がいる。外向的な人もいれば、内向的な人もいる。イェスパーは重要な決定をする前に、できるだけ全員の意見やアイデアを聞くようにする。だいたい8:2の割合で、話すより聞いている時間が長い。

 みんなが発言しやすい形で会議を開くこともあれば、個人的に意見を聞きに行くこともある。会議では、誰が参加しているのか、誰がどんなふうに発言しているのかを、じっくり観察する。場合によっては、会議終了後に、「どう思った?」と一言声をかける。

「僕はリーダーとしてメンバー全員の意見に耳を傾ける。そうすれば、みんなも自然に僕の言うことを聞いてくれるようになるんだよ」

 リーダーに必要な素質は、目標を掲げてメンバーを引っ張っていく強力なリーダーシップとは限らない。みんなの意見に耳を傾け、できる限りの情報、知識、意見、アイデアを引き出し、ベストな意思決定をする。それだけでいい。

 イェスパーの話は「自分にはリーダーの素質なんてない」と感じている人に、新しい視点を与えてくれるように感じた。

 あなたは他人の声に耳を傾けているだろうか。そうであれば、あなたも「良いリーダー」になれるはずだ。