合理的なのに伝わらない…部下を“自分ごと”に変えるリーダーの物語力
「仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつ、マネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

部下が合理的な目標に動かないとき、どうするか?
経営者や管理職としては合理的な目標に部下が自主的に動いてくれないとき、どう対処すればよいのでしょうか?
目標と「働く幸せ」のつながりを示す
きれいごとのように感じるかもしれませんが、目標の実現により部下たちの“働く幸せ”が実現することを示すことも大事です。
徳川家康も目標の実現により「厭離穢土欣求浄土」、つまり戦乱から平和な時代を実現することを示していました。
「働く幸せ」とは何か?
そもそも、“働く幸せ”とは何かを把握することが大前提です。「働く=仕事」であり、仕事とは「つかえること(仕える事)」、つまり他者に仕える事です。
仕えた結果として、他者に喜んでもらい、感謝されることにより、“働く幸せ”を感じられるようになるのです。
歴史が物語る「利他の精神」
およそ400年の歴史のある住友グループの事業精神に「自利利他公私一如」(事業は自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない)というものがあります。
これはいまでいうところの「マルチステークホルダー(多様な利害関係者)主義」にも通じます。つまり、自分たちだけでなく、顧客や取引先、社員、地域社会も等しく重視するということ。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の「三方よし」もそうですが、何百年と培ってきた公益を重視する精神です。
「働く幸せ」が実感できる3つの条件
わかりやすく“働く幸せ”を感じられる状態を整理すると、次の3つになります。
1 商品・サービスを通じて顧客に喜んでもらう
2 働く仲間の役に立ち感謝される
3 社会に貢献する
目標と「働く幸せ」の接点を示す
組織として打ち立てた目標の実現により、こうした“働く幸せ”が具体的にどのように実現するのかを示すことが必要なのです。
私がコンサルティングした機械系のメーカーでは、メンテナンス事業を軌道に乗せることにより、「顧客は機械を止めずに使い続けられ、機械が止まることで発生する顧客の損失を防止でき、顧客に喜ばれる。また、社会インフラでもある顧客の機械を止めないことは、社会貢献にも通じる」と明文化し、全社員で共有したことにより、新事業への社員の主体性、コミットする力、自律性が高まっていきました。