M&A仲介 ダークサイド#8Photo by Yasuo Katatae

日本製造は創業した2017年以来、延べ37社の中小企業を買収した。だが創業者と取締役の経営権争いや、自社の資金繰りのために買収を行うグレーな戦略が明らかになるなど、さまざまなトラブルが浮上。傘下子会社の操業停止や離脱も相次ぐ。そんな同社のM&Aに関与した仲介会社などの企業名が明らかになった。特集『M&A仲介 ダークサイド』の#8では、その実名と件数、各社が行なった買い手調査について公開する。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

日本製造のM&Aに関与した仲介会社
買い手企業調査は十分だったのか

 日本製造は、技術力がありながら後継者不在で存続の危機に直面している中小企業を買収し、「モノづくりプラットフォーム」を構築することを目的に、2017年に創業した。そこで同社は創業直後からM&A仲介会社を使って猛烈な勢いで中小企業を買収。延べ37社(被買収会社の子会社を除く)を傘下に収めてきた。

 ところが同社内ではさまざまなトラブルが発生していた。傘下に入った子会社は、買収時に期待したモノづくりプラットフォームのメリットも得られず、日本製造に内部留保を送金させられたり銀行借り入れをさせられたりしたことにより資金繰りの悪化に直面。24年に入ってから5社が離脱し、少なくとも3社が操業停止などの経営難に至っている(『日本製造で進む「子会社離脱&操業停止」、“M&A錬金術”の全貌と厳しさ増す仲介会社への視線』『著名経営者・千本倖生氏vs日本製造の訴訟が大詰め!M&A仲介業界が固唾をのんで見守る理由』参照)。

 そこで指摘されているのが、M&A仲介会社の日本製造に対する調査が、不十分だったのではないかという点だ。

 M&A仲介会社は事業承継など会社を売却したい売り手企業オーナーと、会社を買収したい買い手企業との間に立ち、株式譲渡価額を含むさまざまな交渉や法的な手続きを担う。通常、M&A仲介会社はM&Aが成立した際に、売り手企業と買い手企業の双方から成功報酬を得るビジネスモデルだ。当然ながら、双方のニーズを満たすことが求められている。

 売り手企業のオーナーのほとんどは、会社を売却した後も会社が発展し、従業員が幸せに働き続けることを望む。そのためM&A仲介会社が成功報酬を得る以前に、買い手企業が健全な経営を行っているかどうかを調査するのは当然の責務だ。

 成功報酬を得たいがために、売り手企業オーナーのニーズに背き、買い手企業の調査がおざなりになっていなかったか、あるいは健全な経営を行っていない買い手企業だと知っていたにもかかわらず、M&A成立を優先させるようなことはなかったか――。M&A仲介会社には今、厳しい視線が向けられている。

 ダイヤモンド編集部は日本製造を買い手としたM&Aを仲介し、財務アドバイスやマッチングなどで関与した企業にヒアリングを実施。次ページでその企業の実名と件数、ヒアリング内容を公開する。