ちなみに新社長となる清水賢治氏は終盤になって、「『楽しくなければテレビじゃない』という、かつてのフジテレビのキャッチフレーズからは脱皮しなければならない」と発言した。この発言前から清水氏は、楽しい雰囲気など一切出さずに似たような返答を徹底して繰り返していた。なるほど、言動一致はもう始まっているということか…。
株主提案は否決され負けても
最終的・実質的には勝っている!?
「会社は誰のものか」と問う永遠のテーマがあるが、少なくとも上場する株式会社は株主のものだ。だから株主総会で、株主は取締役を選定する。取締役は会社の経営を担い、そして代表取締役を選ぶ。
今回、フジは事前に株主に「議決権行使のお願い」として、一部の株主が提案している取締役候補を否決し、会社提案の取締役を認めるようにハガキを送っている。これは法的に問題がないとはいえ、全くもって倒錯した行為だと私は思う。株主の提案を否定してくれ、と他の株主に依頼するのだから。
日本のほとんどの会社は株主総会で、モノ言う株主の提案を否決している。しかし、否決されればそれでおしまい、意味がないなんてことはないと思う。むしろ、極めて意味がある。最終的に会社側は株主提案を、「形を変えて」受け入れる例が後を絶たないからだ。
フジもそうだ。人選は別としても、取締役は大幅に入れ替わり、女性の比率が45%と飛躍的に上がり、平均年齢は下がって若返った。コンプライアンスやガバナンスに関する制度もひとまず充実した。組織改革では編成局の下にあって問題視されていたアナウンス室を切り離した。
株主総会で質問に立ったある株主が、「私は自らフジの社員に『コンプライアンス教育がどれくらい進んでいるか』と聞いて回りましたが、わりと進んでいるようで驚きました」という趣旨の発言をしていた。
また、フジでは不動産事業やテレビ以外のコンテンツ事業の将来性、財務の課題や配当性向の見直しなども検討され始めた。これらはモノ言う株主が要求してきた内容と類似しているのは確かだ。