与野党間でモメた結果(失礼、議論した結果)、基礎控除と給与所得控除の拡大により、給与収入の課税最低ラインは160万円になった。つまり、アルバイト収入も160万円以下なら、子ども自身に所得税はかからないことになった。

 大学生は、親の税金よりも「自分のアルバイトの手取り」に関心が高い。学生同士のコミュニティの中で「今年から160万円まで働いても税金かからなくなったらしいよ!」といった声がひとり歩きすると、とても危険だ。理由は2つある。

(1)住民税は年収110万円を超えるとかかる

 給与所得控除の最低金額の10万円拡大は、所得税・住民税ともに適用されるが、基礎控除の拡大は所得税のみの適用。これにより110万円を超えると住民税がかかる。このことを大学生は見落としている(このあたりの税制は複雑なので見落として当然だ)。

(2)160万円ギリギリまで働くと、親の健康保険から出され、国民健康保険料が発生する

 前述の通り、親の健康保険の被扶養者の収入要件は、現状では130万円で、おそらく税制と合わせて150万円に引き上げられる。

 大学生の子が自分に所得税がかからない160万円ギリギリまで働くと、親の健康保険の被扶養者でいられなくなり、国民健康保険に加入することになる。その保険料を子どもが払うとは考えにくく、親が負担することになるだろう。

 子どもは子ども自身の損得だけに目がいきがちなので、正しい情報を親が伝える必要がある。理由を説明した上で、「年収150万円までにするように」と話すといい。

YouTube、TikTokの投げ銭……
“給与収入以外”の稼ぎ方に要注意!

 親が扶養控除を受ける要件は、子どもの「所得」である。ここまで解説してきたのは、子どものアルバイトが「給与収入」のケースだ。給与収入から給与所得控除を引いた所得に基づいて解説した。

 子どもが働いて得た収入が「雑所得」などなら話が変わってくるので、注意が必要である。

 例えば、インターネットの動画配信サービスなどから得る収入は、それが本業なら事業所得だが、学生なら雑所得に当たるだろう。雑所得と給与収入では所得の計算方法が異なり、収入から必要経費を引いた金額が雑所得で、給与所得控除は使えない。