8~12歳の運動が将来に影響

 東根氏によると、運動能力の遺伝性については確定的なことをまだ言えないのが現状だと言う。

「もちろん骨格や筋肉の質などは遺伝性は高い。でも、運動能力のほとんどは、生まれた後、育っていく環境の中で身に付いていくんです」

 大羽コーチも「『自分も悪かったし、うちの子も悪いよね』と思ってしまう親は多い。でも運動しない親を見た子どもが『動かないものだ』と思って、運動しないだけ。それが家族代々受け継がれてしまって、遺伝だと勘違いしちゃってるなと思います」
 
 つまり、運動すれば運動神経は良くなる可能性があるが、運動しなければ運動神経は良くならないという、シンプルな話だ。そして、運動するためには「運動が苦手」と言う思い込みや決めつけをなくすことが重要なのだ。

 では、子どもの頃に「運動神経が悪い」と思い込み、そのまま大人になってしまったら救いようがないのか……と言うと、そういうわけではない。時間はかかるかもしれないが、大人でも運動能力は改善できる。

「運動神経は、8歳から12歳ごろのゴールデンエイジと呼ばれる間に、もっとも発達します。だからゴールデンエイジによく運動しておくと、将来新しいスキルを身につける時間が短縮されたり、速度が早くなったりするので、トレーニングの観点では効果的と言えます」(東根)

「だからと言って、その時期にやっていなければ、運動神経は良くならないと言うわけではなく、どんな年齢からでも一定のレベルまでは開発できます。実際70代でも、繰り返しトレーニングすることによって、運動ができるようになってくんですよ」(同上)

 ただ、例えばバスケのシュートが入らない大人が、延々とシュートを反復練習していても、ゴールにはなかなか入らない。シュートの動作だけでなく、別の部分に問題が隠されている可能性があるので、専門家らにアドバイスを請い、他者の視点を取り入れることが大事だ。