ダンス嫌いな子どもは少ない理由

 運動嫌いの子どもは、小学校の授業でますます嫌いになる可能性がある。その要因のひとつが優劣をつける相対評価だ。

 東根氏は「個別に、1カ月前と比べてどうだったというような絶対評価をしてあげないと、できない子は落ちこぼれてしまう。絶対評価をすることによって、運動が苦手な子も変わってくる」と言う。

  実際に運動が苦手な子どもたちと接することも多い大羽コーチは、他と比較するのではなく、子どもの個性に合わせて、良いところを見つけて伝えることが大事だと言う。

「教室に来た子で、足は遅いけど、例えばボールの扱いとかがすごく上手だったりとかするんですよね。それを伝えてあげると『え、そうなの?僕そうなの?』と反応して、できることが見えてくる。それに気づくと、子どもたちも親もすごくリラックスしていろんなことに挑戦できるようになってくるんです」(大羽)

 一方で、行き過ぎた早期教育には警鐘を鳴らした。

「幼少期に、高い跳び箱を必死に練習して跳べたとして、その時はいいかもしれませんけれど、小学校2年生くらいで、どんどん追い抜かれていくというケースも報告されています。小さい頃に急かして高度な運動をさせてしまうと、簡単な運動をバカにしてしまったりするんですよね。子どもなりに調子に乗って、そんな簡単な運動はしないと言い出す」(東根)

 高度な運動テクニックを会得させるのは悪くないように思えるが、徐々に「自分が出来ないことはやらない」と言い出す子どももいるようで、運動に限らず、勉強などにおいても努力を避ける傾向になる危うさもある。結果ではなく、その過程だと大人が認識しておくことが大事だ。

 また、ダンスも小学校から必修化されて、運動神経が悪い子どもはさぞ苦労しているに違いないと思っていたが、大羽コーチいわく、実態はどうやら違うようだ。

「運動が苦手という子どもたちと触れ合うことが多いですが、今の小中学生でダンスが苦手と言っている子はあまり聞きません。ダンスに対する拒否感とか苦手意識がものすごく減ってきています」(大羽)

「運動は鍛錬するもの。ダンスだって運動なんですよ。でもダンスは、楽しむものっていう風に認識が違うのかなと。ダンスはジャンルも幅広いので、自由にやれるっていうのが、苦手意識が少なくなる要因なのかなと感じます」(同上)