「運動神経が悪い」は本人の勘違い?
一般社団法人コーチングバリュー協会代表理事の東根明人氏は「運動神経が悪いというのは、何らかの障害がない限り、本人の思い込みや周りの決めつけである場合がほとんどです」と話す。
「運動神経が悪い人と良い人の差は、運動経験の差です。運動をしているとスキーマ、要するに運動の枠組みがさまざま構築されるんですが、運動ができる子はその枠組みの数がたくさん(脳に)保存される。一方、運動神経が悪い子は、経験が少ないため、枠組みの数が少なく、パターン化されてしまっているというのがひとつの要因です」(東根)
しかし、「経験差」だけが原因ではなく、「ネガティブな経験や言葉」も影響しているという。
「運動嫌いになってしまう何らかの経験をしてる可能性が考えられます。誰かからネガティブなことを言われたりすると、運動神経が悪いと思い込んじゃうわけですよね。生まれて間もない頃から、たとえ言葉として理解していなくても、(運動に関して)ネガティブな反応や言葉をかけられてしまうと、苦手意識が生まれてしまうんです」
親の態度が子どもの運動神経の良しあしを決める
東根氏が代表理事を務めるコーチングバリュー協会では、産前産後の親子を対象にした運動教室を開き、親の意識改革にも取り組んでいるという。コーチを務める大羽瑠美子さんは、親が自分の子どもを周りと比較し始めた時から、運動嫌いになる可能性が出てくると話す。
「赤ちゃんの時は、わが子だけと過ごしているんだけど、だんだんコミュニティーができてくると、不安になって、自分の子どもが劣っていると感じてネガティブなことを言ってしまうようになるんです。『うちの子は5カ月でハイハイが出来ないけど、別の子はできてる。うちの子は運動神経が悪いんじゃないか』っていう人もいるんですよ」
「保育園に通い始めると、親同士の『うちの子足が遅いのよね』とか『こんなことができないのよね』っていう会話を、子どもたちも聞いています。すると、子どもも『僕は足が遅いんだ。じゃあやらない』って意識されていくのかなと思います」
また、よくあるのが「親の運動神経が悪いから仕方ない」とあきらめた態度だ。