安い老人ホームは
一部だけ

 そもそも介護費用はどのくらいかかるものなのでしょうか。

 生命保険文化センターの「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、24年における2人以上世帯における平均的な介護費用のうち一時的な費用の合計は47万円、月額は9万円、平均介護期間は4年7カ月(55カ月)。この結果から計算すると、介護費用は平均で総額542万円かかることになります。

 このように多額の費用がかかるため「老人ホームの費用が安いところに引越しする」という話を聞きますが、地方の老人ホームは本当に安いのでしょうか。

 老人ホーム検索サイト「みんなの介護」を見てみても、確かに東京都では月20万かかるところ、東京近郊の千葉、埼玉、神奈川では月16万円ほどで済みます。

 しかし、その他の県を見てみると月13万から15万円ほどで、あまり差はありません。安いところでは和歌山県、愛媛県で10万円ほどで、宮崎県、大分県で8万円台でありますが、地域は限られていて、地方ならどこでも安いわけではありません。

 ここまでみてわかったことは、決して、地方だからどこでも安いというわけではないということ。事前に徹底して調べて選ばなければ、都市部での生活とあまり変わらずコストダウンできないということです。

 一方、年金が少なく貯金がないなどで老人ホームの費用を余裕を持って用意できない場合、老人ホームの選択基準は、毎月の家賃が年金額の範囲内に収まるようにしましょう。場所にこだわらないのであれば、安いところから探す方法もあるでしょう。

 仮に、月に2万円ほどしか安くならなかったとしても、入居一時金は、地方の場合は数百万円で済んだり、必要としないところもあります。貯金があまりない人は、一時金がない地方の老人ホームを選ぶ方法もあるでしょう。

 ちなみに貯金がある人は一時金として前払いをすることを勧められます。途中で身元保証人が病気になって入金できなくなったり、本人も認知症になって自分で銀行から引き出す作業ができなくなるケースがあるためです。

 一括で大金を払って、もし合わずに退去したくなった場合、すべて返金してくれるかどうか心配です。貯金を毎月の支払いにまわすよりも、個人年金を切り崩す方法をとるほうが明快かもしれません。

 また、認知症になったり、要介護のレベルが高くなったりすると、退所しなければならないことがあります。「要介護3以上」や認知症になっても入居できる安い老人ホームがあるのがベストです。そうでなくても、状況の変化に応じて住み替えの選択肢が取れる、様々なタイプの施設が近くに複数ある地域を選ぶといいでしょう。