失敗しない終の棲家選びの
鉄則とは?

 地方の生活に馴染んで楽しんでいても、病気になり病院の近くに住みたくなり、80代になってから東京圏への転入者は増えています。老後に慌てないためには、「今は元気でも将来は誰もが病気になる」と想定して、病院が近く、老人ホームにも恵まれているエリアを選ぶことが大切です。

 自然あふれるところよりも利便性がある場所が合っていると思う人は、駅の近くを選びましょう。

 できれば都心まで2時間以内で、車だけでなく電車でも通える地域が理想です。例えば、埼玉県の滑川町の森林公園駅のように、東武東上線の始発なので座れる上、池袋駅まで急行で1時間あまりといった地域は理想的です。

馴染めるコミュニティがなければ
「自らつくる」心意気で

 もうひとつ、新天地に馴染めるか?という大きな問題もあります。どうしても地方に引越しすると1から友人をつくらなければなりません。日中、過ごす場所の選択肢が豊富にあることも重要です。

 老人ホームだけでなく、図書館、博物館、市役所、出張所、児童館、高齢者施設などが近くにあれば、ベストです。イベントが多ければ、自分の役割も増やしやすいでしょう。

 ある夫婦の例ですが、移住した後、夫は元職場の人とゴルフざんまいになり、妻は隣人のおばあさんに干渉されるのが嫌だと愚痴をこぼすようになりました。妻はしだいにうつ病のようになってしまいました。

 妻を心配した夫は、市役所の移住窓口に相談し、家の1階を中古本の売買店にすることにしました。近所の人が本を買いにくるようになり、そのうち子ども食堂の場所として貸し出したり、イベントを開催するようになりました。

 近所には本屋もなかったので、感謝されるようになり、自分たちが病気になったときにも近所の人が薬を買いに行ってくれたりと、サポートしてくれるようになりました。自らコミュニティを作ったという好例です。

 定年後、里帰りする人は増えていきますが、一歩踏み出す前に、若いときに都心に引越してきた理由を思い出してみてください。地方で人に干渉されるのが嫌だったという人もいるのではないでしょうか。その思考は変わっていないかもしれません。

 地域の出身者であってもそうでなくても、“都市部から来た人”はそれだけで注目されます。干渉されることに対してマイナス思考になるのではなく、自ら利便性を追求するまとめ役になることで、周りを取り込んでプラスに働きたいものです。

定年後に地方移住→80代で「都市部に出戻る人」が見落としている重大リスク
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