なんで!?ラージを注文したくない現実

 この謎を解き明かすための仮説は、2つ考えられる。

 第1の仮説は、顧客層の特性に基づいた価格設定戦略である。セブン-イレブンは、レギュラーサイズを注文する顧客層と、ラージサイズを注文する顧客層の特性が異なると分析している可能性がある。

 レギュラーサイズを選ぶ顧客は、日常的な消費の中で費用を意識し、価格に敏感な層が多いと想定される。一方で、ラージサイズを積極的に選ぶ顧客は、量をたくさん飲みたいという欲求が強く、価格の細かな差には比較的無頓着な層が多いのではないか。

 もしかしたら価格感度の低い顧客層に対しては、多少割高な価格を設定しても需要は落ちないと判断し、ラージサイズを収益性の高い商品として位置付けているのかもしれない。

 つまり、顧客の集団ごとに価格への反応が異なると見込み、それぞれに最適化された価格を設定しているという高度な戦略が背景にあるという考え方だ。

 第二の仮説は、消費者の心理的な思い込みを逆手に取った戦略である。

「大きいサイズの方がお得に違いない」という、長年の消費活動によって形成された消費者の固定観念を利用している可能性だ。多くの人々は、いちいち単位あたりの価格を計算することなく、直感的にラージサイズがお得だと判断して購入する。

 セブン-イレブンは、認知の偏りを巧みに利用し、消費者が自ら割高な商品を選んでくれる状況を作り出しているのかもしれない。消費者から見れば一種の巧妙な仕掛けのようにも感じられ、企業の姿勢としてはあまり好ましいものではない。もし仮説が正しいとすれば、消費者の信頼を損なう危険性もはらんでいる。

 どのような理由があるにせよ、消費者として自らの利益を守るために知っておくべき事実は一つだ。

 セブン-イレブンのアイスコーヒーは、美味しく、便利で、多くの人々にとって欠かせない存在である。その価値は揺るがない。

 ただ、費用対効果という観点に立つならば、ラージサイズを選ぶという選択肢は筆者には存在しない。

 賢い消費者であるならば、量を多く飲みたい場合でも、レギュラーサイズを注文するのが唯一の正解となる。もしレギュラーサイズ一杯(97mL)では物足りないと感じるなら、ラージサイズ一杯(149mL)を注文するのではなく、レギュラーサイズを2杯(合計194mL)注文することを検討すべきだろう。

 これが令和の大人買いというものだ。