自分の中に湧き上がる使命感とは

 若い頃からしっかりとしたお考えをお持ちだったんですか。

山本 問題意識を常に持っていると言えるほどではなかったですね。やはりビジネススクールでの経験が大きかったと思っています。

人々の健康を保つには<br />医療・ヘルスケア業界をけん引する<br />トップリーダーの存在が不可欠新 将命(あたらし・まさみ)
1936年生まれ。早稲田大学卒業後、シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスを含むグローバル・エクセレント・カンパニー6社で40年にわたり社長職を3社副社長職を1社経験。2003年より住友商事を含む数社のアドバイザリー・ボードメンバーを務める。長年の経験と実績をベースに、経営者や経営幹部を対象とした経営とリーダーシップに関する講演・セミナーをし、国内外で「リーダー人財開発」の使命に取り組む一方で、経営者・経営者グループに対する経営指導、相談役も果たしている。自身のビジネス人生で得た実質的に役立つ独自の経営論・リーダーシップ論は経営者や次世代リーダーの心を鼓舞させ、講演会には常に多くの聴講者が詰め掛けている。
著書に『経営の教科書』(ダイヤモンド社)『伝説の外資トップが説く リーダーの教科書』(ダイヤモンド社)、『伝説の外資トップが説く 働き方の教科書』(ダイヤモンド社)、『コミュニケーションの教科書』(講談社)など。またオリジナル教材『経営・リーダーシップ実学』やCD教材等も。

新将命 公式サイト

 オギャーと生まれたときから高い向上心・向学心をDNAに刷り込まれているタイプと、何かインシデントやアクシデントがあって火がつくタイプ。人にはこの2つのタイプがいると思います。

 私は32歳でシェル石油からコカ・コーラに転職をしましたが、当時の日本では転職というのは一種の裏切り行為と思われてもしかたがないことでした。しかもそれが外資系で、非常にスタビリティ(安定性)が低かった。私には忸怩たる思いがありました。

 ですが、そんな時に次男が生まれたんです。父親として肩にぐんと重みを感じ、これは頑張らなければいかんなと。つまりアクシデントがあって私は変わったわけです。

山本 取材などで「山本さんの使命感は何ですか?」と聞かれますが、使命感と高らかに宣言すると、どこかでくじけてしまいそうで怖いと思うこともあるんですよね。

 使命感ですと宣言することで自分を動かすのではなく、例えば目の前に困っている人がいるから助けるといった衝動のような意識に突き動かされるようでなければと思っています。

 その衝動的なまでの意識が使命感と言うんですよ。なぜこの仕事をしているのか、自分の力を持って何かしら社会の役に立ちたいと思う気持ち、それをあえて硬い言葉にすると使命感なんです。

 アップしたりダウンしたり、調整したり強制したりしながら進んでいくうちに、自分の形が見えてきます。危険なのは、「自分の型はこれだ」としがみつくこと。その瞬間から衰退が始まるんです。私は死ぬまで不満を持つべきだと思う。英語ではポジティブ・ディスコンテント。つまり積極的不満ですよね。私は長いビジネスマン人生を送ってきましたが、まだまだ不満だらけです。現状をひっくり返してやりたいと思っています。