豊かな時代に甘えず、海外に飛び出してほしい

川本 江理子さんの本の中で一番印象的だったのは、「人生の最後の日だと思って生きてきた」というスティーブ・ジョブズの言葉を受けて、「自分もそう思って生きてきた」と書いてあったことでした。

河合 給料がよくても、仕事には刺激がないBISでの生活を書きましたけど、それだけの理由で定年までいると絶対に自分が後悔すると思うんですよね。

川本 日本の変革の議論をしていると息が詰まりそうになってしまうことはあります。

河合 空気が重いですよね。小さい頃から、言いたいことを言うと「そんなこと言っちゃいけない」と注意されてきました。とくに、時代もあり、女性だったからということもあったと思いますけどね。

川本 許容範囲が狭いのかもしれませんね。

河合 すごく狭いと思います。反対に海外では、黙っていて何もしなかったら、「この子はつまらない」って本当に無視されてしまいますけど。

川本 若い人の中には、自分のなかで楽しいと思えることがあって、それをエンジョイできる人たちがものすごくたくさんいると思うんです。ITリテラシーも高いですし。

河合 すごくわかる。

川本 豊かな国の若者たちですよ。みんな堂々として、体格もよくて。

河合 大きな可能性があって、私たちの時代よりも恵まれているのでうらやましいですよ。私たちのときはそこまで気楽に海外に行けませんでしたけど、いまは気楽にいろいろなところに行けますよね。恵まれた環境にいるのに、それを利用しないことはもったいないと思います。

川本 私も、そんなに才能があるのだから、それを使えばいいのにと思います。才能を活かしきれていないし、活かす方法を教えてもらっていない。活かさなくても安心して暮らしていけるけど、もっと楽しいことがあると知ってほしいです。

河合 私は、もう少しハングリーになってほしいと思いますね。もっといろいろな機会を自分から探してもらいたい。目の前にあることにも気がつかないで通り過ぎていってしまうように感じます。

川本 豊かな時代なので、日本がとにかく安全で、一番おいしいものがあるということがわかっているからでしょうね。私たちの時代では、外に行ったほうがきれいなもの、おいしいものがありましたから。

河合 そうですね。

川本 時代感覚が違うと思います。日本のそういう現状はエンジョイしていいと思うんだけど、世界はそれだけではないって知ってほしいですね。


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