伊藤忠商事が総合スーパー(GMS)3位のユニーに3%出資して、実質筆頭株主となる。イオンとセブン&アイ・ホールディングスの流通2強に対抗する第3勢力の構築を狙うという。

 商品調達や物流の効率化で既存事業のテコ入れを図るのはもちろんだが、その先に見据えるのは「マーケット・チャイナ」。両社の利害は“市場としての中国”の開拓で一致していた。流通2強も財閥系商社と組み、中国をはじめ海外展開に熱心だ。

 「日本では、なかなか通用しなくなった」。ユニーの前村哲路社長がそう吐露するように、低成長時代に突入した国内市場だけでは、もはやGMSの経営は成立しない。8月中間決算で同社は11億円の営業赤字に転落してしまった。

 ユニーは打開策として、2011年以降に予定する上海出店を手始めに、GMSの得意客である中流層の台頭著しい中国で本格展開する。その支援をするのが中国での事業ノウハウと物流網を持つ伊藤忠というわけだ。

 “爆食”と称される中国市場には、欧米資本も出店攻勢をかけており、競争は熾烈だ。進出しても収益源に育つまでは何年もかかる。

 その最激戦国で、伊藤忠が投資を加速させている。柱となっているのが「SIS戦略」。中国の生活産業における川上・川中・川下の各分野で、一貫して取引に関与し収益を増幅させるのが狙いだ。

 昨年には中国最大の国有食料企業グループ、中糧集団と包括提携。さらに700億円近い巨費を投じ、中国・台湾の食品・流通最大手、頂新グループに資本参画した。伊藤忠は同グループと、外食、清涼飲料、製パンなどで日本企業の進出を後押し。巨大市場における食のバリューチェーン構築を進めてきた。

 そんな伊藤忠にとって、ユニーの進出は願ったり叶ったりだった。というのも、伊藤忠の中国SIS戦略には、小売り事業が欠けていた。「頂新グループにも大陸でのリテール分野の実績はなかった」(伊藤忠・食料中国事業推進部)が、川下にユニーを組み込むことで、弱点を補完できるのだ。

 伊藤忠は、すでにユニーの“次”も視野に入れている。じつは水面下で食料部隊が、複数の日本の食品メーカーと中国進出に向けた計画を練っているというのだ。国内市場だけで食べていけないのはGMSに限らない。中国SIS戦略を推し進める伊藤忠は、着実にその地歩を固めつつある。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 山口圭介)

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