行動観察の重要性をより高めた2つの変化

――行動観察によってどういったことが得られるのでしょうか?

松波 一言でいうと、「まだ誰も明確に言語化できていない本質」ですね。「付加価値創造」の行動観察であれば、「顧客がまだ言語化していない、本質的な潜在ニーズ」であり、「サービスサイエンス」の行動観察であれば、「現場がまだ言語化していない、本質的なノウハウ・課題・解決方法」です。

――どうして今、行動観察が重要になっているのでしょうか?

松波 大きな背景を2つお話します。1つは、「成熟社会」です。これまでのさまざまな人や企業の試行錯誤により、製品やサービスが成熟化し、「別に困りごとはない」という世の中になりました。困りごとを解決するのではなく、新たな価値を創る必要が出てきたわけです。

 そのため、顧客の声を聞くだけでは新しい価値を創りにくくなっています。また、企業もこれまでの運用の仕組みの中で成果を挙げてきましたが、生産性が上がったものの、現状の枠組みの限界が見えてきました。つまり、「何が本質なのか?」という仮説を得ることが重要になっているのです。

――もう1つの背景とは?

松波 もう1つは、「ダーウィンの時代」です。情報社会になり、変化のスピードが上がっています。これまでは、「ニュートンの時代」でしたが、今は「ダーウィンの時代」だと言うことができます。「ニュートンの時代」には、いつの時代にも通用する正解があり、それを追い求める、というアプローチでよかったのです。しかし、「ダーウィンの時代」には、変化の激しい環境に対して適合することが生き残りの条件になります。

 つまり、現代は、積極的に自らが突然変異を起こしていく必要があるのです。だからこそ、イノベーションの必要性が叫ばれているわけです。そうなると、「正解に早く行き着く」という従来の枠組みよりも、「新しい土俵を自らが創る」ということが必要になってきました。そこでは、「何が本質なのか?」という仮説を生み出すことが重要になります。

第2回では、行動観察がどのように活用されているのか、その具体的な内容を紹介する。次回更新は、12月26日(木)を予定。


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『「行動観察」の基本』(松波晴人 

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