国際化という企業の行為を探究した博士論文

 私の博士論文も、それが将来価値を持つものとなるかどうかはまだわかりませんし、実際のところ、たいしたことはないのかもしれません。しかし、この論文も悪戦苦闘の末に生まれました。

『領域を超える経営学』でも、また、これまでの連載でも述べてきたように、経営学は領域学的です。したがって、より方法論が定まっている他の研究領域に比べれば、手法的にも、理論的にもかなりの多様性を内包している研究領域だと言えます。

 しかし私は、すでにある数々の研究領域の1つを選択して議論することは、どれも物足りないように感じていました。つまり、そのいくつかを再癒合させる必要があると考えたのです。

 そこで、私の博士論文では、「マクロ的な要因」「ミクロ的な要因」「内部要因」の3つの要因に議論を切り分けることにしました。そして、そのそれぞれにおいて、国際化という行為を、企業という組織がどのように、なぜ行うのかを探究しました。

 最終的にたどり着いた私の独自の主張は、企業の国際化に影響を与える要因は「異なる理論体系を起源として発展してきた、しかし相互に実際は関連するべき、3つの複層的な要因から理解するべきではないか」というものです。

 やや専門的な話にはなりますが、こうした機会のため、この3つの複層的な要因についてどんな議論をしていたのか、簡単にご紹介します。