自己肯定感の底を家族がつくる

「1時間叱り続けることはできるのに、1時間褒め続けることができない日本人」<br />【佐々木圭一×坪田信貴】(中編)坪田信貴(つぼた・のぶたか)
株式会社青藍義塾(せいらん・ぎじゅく)代表取締役 塾長、学校法人大浦学園 理事長。自ら生徒を指導する教育者でありながら、同時に、IT企業など複数社を創業した起業家であり、それらの経営者でもある。その活動の場は日米にまたがり、ネイティブ並みの英会話力を誇る。TOEICは990点(満点)。これまでに1000人以上の子ども達を個別指導し、心理学を駆使した学習指導法により、生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。教え子には、「高3の夏まで文系クラスだったが、その後、理系に転向して国立大学医学部に合格した女の子」、「高3時に学年で100番以下だったが、東京大学に合格した男の子」など、異例のエピソードを持つ者多数。愛知県名古屋市在住。

佐々木 坪田さんの本の中で印象に残ったのは、サヤカちゃんが母親から塾代をもらったシーンです。坪田さんは彼女に「このお金の重み、わかってる?」と聞いたら、サヤカちゃんは自分の母親に「ああちゃん、私、絶対受かってみせるから。絶対、いつか倍にして返すから」と言ったんですよね。――ああちゃんっていうのは、彼女のお母さんなんですけど、「慶應には受かっても受からなくてもいいのよ、サヤちゃんが学ぶことのすばらしさに気づいてくれただけで、うれしいんだから」と、お母さんは言ったんです。「お金のことは何も気にしなくていいんだよ」という言葉を聞いて、サヤカちゃんは「もう塾では一秒たりとも寝れないな」って思った。やっぱり、教え方も大事ですが、家族のコミュニケーションも非常に大切なんですね。

坪田 勉強ができる、できないって、すごくシンプルな話で「頭が悪い」とかじゃなくて、単純に勉強が遅れているだけなんです。なので、高校2年生の子が勉強できない理由は、その前の段階で必ず詰まりがあるから。それが小学4年生の段階だったら、小学4年生のところに戻ればいいだけなんですよ。
 実際、小学4年生のドリルをやらせると、それは意外とできるので「あ、結構できた」って喜んだりするんですよね。
 でもその子が家に帰って「何、喜んでんの」みたいなことを親に言われると、本人としてみれば、スモールステップでも学んでるはずなのに、大きなステップにしなくちゃいけない。結局、これって価値がなかったんだとなる。自分が今までやってきたことが認められないのって、つらいじゃないですか。

佐々木 つらいですよね。

坪田 その子のちょっとした成長を認める。これが、すごく大事だと思います。自分のことを認められない人って、一生不幸せだと思うんですよね。なので、自分に少なくとも肯定感があって、「お前が今やってることは大丈夫なんだ」って。「少なくとも、この人たちは認めてくれる」っていう人が周りにいることは、すごい大事です。特に僕は、それがお母さんであることが大事なのかなと思ってます。

佐々木 僕も自分のことを認められない時期が学生時代にありました。その解決策のヒントは、家族にあるんですよね。どんなに些細なことであっても、家族がそれをきちんと受け止めてあげたり、褒めてあげるっていうことが大切だということですね。