まず、やってみることが大事
出雲 先生は、絶えず泳ぎ続ける、本当にマグロのような生き方ですね。先生が取り組まれている料理は、私たち科学の現場の実験と似ている部分が多いなと感じています。
ミドリムシを培養する時には、もちろんレシピがあるのです。しかし私が実験現場に行って、「レシピにはそう書いてあるけど、違うものを混ぜたらどうなるの?」と研究者に聞くと、「いやいや出雲さん、そんなの混ぜたってだめですよ。だってレシピに書いてないし」と反論してくる人がいるんです。そこで「じゃあ君は、混ぜたことあるの?」と聞くと「ない」と言います。そこで私が「やったことがないのに、なぜだめだって分かるの? やってみなよ」と言って、すぐにやってみる研究者がいい発見をするんだと思います。
情熱のあるいい研究者はすぐ行動します。私たちはそんな研究者といっしょに仕事がしたいと思っています。
松久 僕も、誰かにアドバイスをもらったとき、それを即実行に移す、自分でやってみることが何よりも大事だと考えています。アドバイスにすぐリアクションを起こしてくれる人が僕も好きですね。「分かりました」と言いながら結局何も行動しない人は、それまでの技量だったのです。そういう人は伸びていかない。我々は包丁一本の世界だから、「やる・やらない」でしかない。将来を左右するのは経験だけなんです。
敢えて生意気を言わせていただくと、僕は自分が生きてきて経験したから言えるところがあります。自分ができてないことは人にはアドバイスできません。10代の頃から料理の世界にいますから、僕は僕なりの持論は持っている。だからアドバイスはするけれど、若い人もまた、全て僕の言うことを聞く必要はないし、同じようにやる必要もないのです。僕ができるのはあくまでアドバイスです。
その先の成功や失敗は、その人がどう行動するか、そしてそこから何を経験するかにかかっています。
出雲 まさに先生が著書で書かれていることですよね。これは本当に一級のチームマネジメントです。
松久 やっぱり現場の人間は行動しないと。頭の中だけで計算していてはできないですからね。まずやってみる。一度失敗したら体で覚えます。そこから新たに自分が発見できる視野が広くなる。あの……“先生”はやめて“ノブさん”にしませんか?(笑)。
出雲 わかりました! では、次回から「ノブさん」とお呼びするようにします!
<取材協力:NOBU TOKYO>
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