山盛りのホイップクリームがのせられたスタバの「フラペチーノ」。パステルカラーの砂糖衣で身を包んだ、クリスピー・クリームのドーナツやマグノリア・ベーカリーのカップケーキ。なぜ我々は、甘いものにこれほど「病みつき」になっているのか?
約15年間、自らもアルコール依存に陥っていた記者が、綿密な取材と実体験をもとに著した『依存症ビジネス』は、テクノロジーとビジネスの共犯関係、さらに社会が依存症を生み出すカラクリを暴いた。こうした現象は、「危険ドラッグ」にまつわるニュースが日常に溢れ、過去にはスマホゲームへの課金が社会問題になった日本人にとっても、決して無関係ではない。第4回となる今回は、日常だけではなくオフィスにも侵入しはじめた甘すぎる「スイーツ」について、砂糖の恐ろしい「素顔」とともにレポートする。
砂糖は脳を支配する
――ケーキとコカインの類似性
2011年2月、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが、「公衆衛生――糖分の毒性に関する真実」と名付けた論文を『ネイチャー』誌に発表した。この論文は、糖分は“無意味な(エンプティ)”カロリーであるとする世間一般の考えを一蹴することになった。それどころか、糖分は悪いカロリーだと指摘したのである。「少しなら問題ないが、多量に摂取すると命に関わる――徐々に体をむしばんでいくのだ」と。著者らはさらに踏みこんで、糖分の多い食品には税金を課すべきであり、17歳以下の子どもたちへの販売は規制すべきだとまで主張している。
しかし、砂糖は薬物だと言えるのだろうか?
他の銀河からふらっと地球にやってきた宇宙人が人間を見たら、私たちは実際よりもひどい薬物濫用に陥っているとみなすだろう。なぜって? もちろんそれは、私たちの大部分が、白い結晶を1日に何度も摂取しているからだ。そして、その供給がとぎれると動揺し、もっと手に入れるための苦しい言い訳をする。私たちは“エネルギー”の供給源として糖分が必要だと言うが、それは自分をだましているだけだ。糖分がもたらすエネルギーがみなぎったあとには、それに呼応するエネルギーの低下が続く。だから、生理学的には役に立たないのだ。しかし、その生理学的な作用メカニズムは、たとえばコカインのような薬物による浮き沈みを強く思いおこさせる。
糖分には、娯楽用の麻薬に含まれている精神活性特性の一部がそなわっているという考えは、とみに信憑性を増している。過去10年間に判明した重要な研究結果の1つは、砂糖がラットを典型的な依存症に陥らせるというものだ。プリンストン大学心理学部の科学者チームが行ったこの研究では、通常の餌に加えて、大量の砂糖水を断続的にラットに与えた。砂糖水を断続的に与えた理由は、砂糖を取りあげたとき、ラットに何が起こるかを知りたかったからである。その答えは、離脱症状(禁断症状)だった。ラットは、フィックスが手に入らない麻薬中毒者のように、不安げに震えていた。そして、砂糖水が再び与えられると、むさぼるように飲みほしたという。