情報サービス大手のCSKホールディングスが検討を進めている傘下のコスモ証券売却で、すでに10社あまりが金額を提示していることがわかった。
入札しているのは、準大手証券の東海東京フィナンシャル・ホールディングスや日本アジア証券、投資ファンドのアドバンテッジ・パートナーズなど。
なかでも最高額を提示した番狂わせな“伏兵”は、中国の証券会社だ。中国だけでなく、韓国や台湾、シンガポールなどのアジア勢も入札している模様で、おおむね外資は「提示額が高額だった」(CSK関係者)という。
入札金額の幅は180億~250億円前後と見られ、今後、年内には候補を数社に絞り、年度内には確定する方向で調整する模様だ。
大阪に本社を構えるコスモ証券は、資本金135億円の中堅証券。昨今の株式市場の低迷などを受け、2009年3月期は2期連続の最終赤字となり、赤字額は106億円にもふくらんだ。
にもかかわらず、外資を含めて10社以上が買収に名乗りを上げたわけは、コスモの顧客基盤にある。同社は1917年に開業した歴史ある老舗証券で、「良質な顧客がついている」(中堅証券社長)と見る準大手や中堅クラスの証券会社は少なくない。
個別の思惑も見え隠れする。なかでも東海東京フィナンシャル・ホールディングスは、来年1月にトヨタファイナンシャルサービスから証券業務を買収するなど、ここ最近の攻勢が目覚ましい。名古屋圏を中心に店舗を構える同社にとって、「コスモの抱える関西店舗網は魅力的」(関係者)と映っているようだ。
アドバンテッジについても、投資先の証券会社の「エグジット(投資資金回収)を目論んでいる」と、複数の関係者は明かす。
アドバンテッジは06年12月にかざかフィナンシャルグループに投資、今年10月には傘下のかざか証券(旧ライブドア証券)のFX部門をFXリアル証券に、11月にはオンライン部門をオリックス証券に譲渡する。残る証券部門をコスモとのシナジーによって売却し、利益を確定したいというわけだ。
もっとも、現時点では先の中国系証券が一歩リードしている。そもそもCSKは、不動産証券化事業で多額の評価損を計上、09年3月期には1615億円の最終赤字に転落しており、取引先の銀行団からリストラ案の策定を求められている。であれば、「より高い金額で売却したい」(関係者)というのが偽らざる本音だ。
ただし、中国の証券会社は本国での規制が強いため、日本進出へのハードルが高い。九月に銀行団からさらなる資本増強の支援を受けたCSKは、売却先を速やかに見極める必要に迫られている。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 池田光史)