2030年を切り拓くために
企業に期待されている「ビジネスのちから」とは?

――2つめに挙げられていた「企業とのパートナーシップ」については、もともと積極的に進められていたのではないかと思います。今年はどこが違ったのでしょうか?

中村俊裕(なかむら・としひろ)
米国NPOコペルニク 共同創設者兼CEO。
京都大学法学部卒業。英国ロンドン経済政治学院で比較政治学修士号取得。国連研究機関、マッキンゼー東京支社のマネジメントコンサルタントを経て、国連開発計画(UNDP)で、東ティモールやシエラレオネなどで途上国の開発支援業務に従事。アメリカ、スイスでの国連本部業務も経験し、ソマリア、ネパール、スリランカなど紛争国を主にカバーしていた。
2009年、国連在職中に米国でNPO法人コペルニクを設立。アジアやアフリカをはじめとする途上国の、援助の手すら届きにくい最貧層が暮らす地域(ラストマイル)へ、現地のニーズに即したシンプルなテクノロジーを使った製品・サービスを提供する活動を行い、貧困層の経済的自立を支援している。
2010年、2011年には、クリントン元米大統領が主催するクリントン・グローバル・イニシアティブで登壇。2011年にはテック・クランチが主催する「クランチーズ」で表彰。2012年、世界経済会議(ダボス会議)のヤング・グローバル・リーダーに選出された。また、テレビ東京系の「ガイアの夜明け」やNHKなどメディアへの露出も増加している。現在は大阪大学大学院国際公共政策研究科招聘准教授も務め、マサチューセッツ工科大学(MIT)、コロンビア大学、シンガポール大学、オックスフォード大学、東大、京大など世界の大学で講演も行っている。

中村 もちろん、従来から進めているのですが、今年は世界的な規模でその重要性が高まっていることが背景にあり、それで加速していると言えます。その象徴が、今年の11月9~11日にアラブ首長国連邦のドバイで開催された世界経済フォーラム(通称ダボス会議)の「グローバル・アジェンダ委員会」でした。

――中村さんも参加されたのですか?

中村 はい。私もその委員会の「持続可能な開発」委員(※2)として参加しました。

 そもそも、このグローバル・アジェンダ委員会とは、雇用問題、政府の未来、脳の研究、高齢化、紛争といった多くの課題をカバーする86の委員会で構成されており、今後の世界で、何が重要な課題となるのか議論し、さらに解決策を推し進めていく委員会。今年の会議には、日本からも30人ほどが参加していました。

 そして今年から私も参加することになった、「持続可能な開発」に関する委員会は、ミレニアム開発目標(極度の貧困と飢餓の撲滅など、2015年までに達成すべき8つの目標を掲げて国連で採択された目標)の次の枠組みをいかに実行に移すかを念頭に置いています。2030年までに達成を目指す次の枠組みは暫定的に「持続可能な開発目標」と呼ばれ、8つの分野を扱ったミレニアム開発目標よりもさらに包括的な17の分野での目標設定を目指しています。たとえば、気候変動、生物多様性、司法へのアクセス、すべての年齢の人々の福祉を推進することなど、過去15年でさらに重要度が増した分野です(※3)

――なるほど。お話を聞いている限りでは「国連などの大きなお話」のように聞こえますが、企業やビジネスはどう関わってくるのでしょうか?

中村 まさしくそこが重要な点です。地球規模で解決すべき課題を包括的に設定し、持続可能な方法で達成するために、「ビジネス」への期待は大きいことがその理由です。特に、途上国への投資と、イノベーションを通じて新たな解決策を提供するという役割への期待が高まっています

 これは、委員会のメンバーの推移を見てもらうと明らかです。「持続可能な開発」委員会の前身である「貧困と持続可能な開発」委員会では、委員のほとんどが開発援助機関や国際NGOのメンバーでした。しかし今回は、
・新興国を対象とするプライベート・エクイティー
・インパクト・インベストメント(貧困層の生活改善に役立つイノベーションのタネに投資をして社会的・経済的リターンの両方を狙うこと)を行う企業
・多国籍企業
・ベンチャー企業(コペルニクのパートナーであるソーラーライトのメーカーd.lightの共同創設者も名を連ねています)
 といったプレイヤーたちが顔を並べています。途上国のニーズと企業のテクノロジーをつなげているコペルニクも、その文脈から声がかかったのでしょう

(※2)世界経済フォーラムのウェブサイトを参照。
http://www.weforum.org/content/global-agenda-council-sustainable-development-2014-2016-0
(※3)国連広報センターのウェブサイトを参照。
http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/9693/