「グローバルな舞台で戦える企業に」
「途上国で受け入れられる製品づくりを」
企業がグローバル展開、特に途上国を中心としたBOP市場にでていく必要性についての認識は広まってきた。しかし、途上国のマーケットについて、そのリアルな実態を理解している企業やビジネスパーソンはどのくらいいるのだろう。
いま、そうした途上国の「真のニーズ」を知っている、あるNPOが世界中から注目を集めている。その名は、コペルニク(Kopernik)。国連や世界銀行といった国際機関、マサチューセッツ工科大学(MIT)や慶応大学などの大学、パナソニックなどの伝統的なモノづくり企業から協業のオファーが殺到、世界中でともにプロジェクトを行っているグローバルな組織だ。
マッキンゼー、国連を経てコペルニクを創業し、ニューヨーク、インドネシア、日本を飛び回り、20ヵ国以上でプロジェクトを行っている中村俊裕氏の来日に合わせて、コペルニクの最新の成果とともに、「これからの15年」を読み解くビジネスのあり方を聞いた。(構成:廣畑達也)

「スーパー」は小売りの中心ではない
――途上国の85%を支配するネットワークを活用できるか?

――2014年2月に書籍『世界を巻き込む。』を刊行されましたが、その後の約1年で最も大きく発展したものはなんでしょうか?

中村 今年のコペルニクで進化したものは、大きく分けると2つあります。「テック・キオスク」、そして「企業とのパートナーシップ」です。まずはテック・キオスクからお話しましょう。以前この連載のインタビューでもお話した「途上国のニーズ」の話は覚えていますか?

――確か、「消費者の9割は農村にいる。だから、そこで暮らす人のニーズをつかまない限り、広く受け入れられるものはつくれない」ということでした。

中村 そうです。この話には、続きがあります。マッキンゼーの報告書(※1)によると、たとえばインドネシアの小売市場の85%が、家族単位で経営されるような小さなビジネスで構成されている、とあります。つまり、インドネシアの人々にリーチするには、こういった伝統的なパパママ商店を押さえることが重要なのです。大きなチェーンのスーパーマーケットがない農村部では、さらにこの比率は高くなり、よって重要度は増すことになります。

――小さな売店のネットワークが85%を占めるとは……! 驚きです。

中村 「ワルン」と呼ばれているこのインドネシア農村部の小さな売店を使ってテクノロジーを普及できるのではと思いついたきっかけは、偶然にすぎません。コペルニクのプロジェクトを通じて、各国・各地の農村部を回ったのですが、行く先々で「売店」を見かけたんです。そこは、地元の人たちが、石鹸やシャンプー、水といった日常に必要な物を買っているところ。しかも、それらはどうも互いにつながっていて、1つの流通網を形づくっていることに気づきました。

「この流通ネットワークは、コペルニクが扱うようなテクノロジーの流通にも使えるのでは?」

 そう考えて調査をしてみたところ、みなさんとても興味を持ってくれました。そこでこの売店のネットワークを通じて、貧困層向けのテクノロジー(小さなソーラーパネルとLEDライトの組み合わせで明かりをもたらすソーラーライトなど)を流通させる、というのが「テック・キオスク」です。

インドネシア、東ヌサトゥンガラ州のテック・キオスク。卓上にはソーラーライトや浄水器などが並ぶ。

――途上国の隅々まで訪ねて本物のニーズをつかんでいるコペルニクならではの取り組みですね。現在はどのくらいの規模で行っているんですか?

中村 現在のところ、60を超えるテック・キオスクのネットワークへと広がっています。来年2015年の終わりまでには、200までテック・キオスクを広げていく計画です。日本企業からも、製品のテストやリサーチなどで使いたいという声をいただき、実際にテストするに至ったのも、今年の成果でした。

(※1)From oxcart to Wal-Mart: Four keys to reaching emerging-market consumers, Mckinsey quarterly, Oct 2012