面白いのは、そういう優良企業の経営者は、誰もが「今期は残念ながら黒字になって、税金を払うはめになりそうです」などと言うのです。いったん赤字決算の味をしめた経営者は、こちらが進言しなくても、どんどん赤字にできる材料を探して処理していきます。

 みなさんにも、ぜひとも赤字決算のうまみを理解してもらいたいのです。上場会社は、株価の問題もあるので、簡単に赤字にすることにはためらいが出ますが、中小企業の経営者や経理マンであれば、なにも躊躇することはありません。

営業利益さえ確保できれば、
最終利益は赤字でも問題ない

 銀行が重視するのは営業利益、つまり本業で稼いだ利益です。本業が黒字であれば、税引前利益が赤字であっても、なんの問題もありません。もうおわかりだと思いますが、冒頭で私が申し上げた「赤字決算にしてキャッシュをためる」の「赤字」とは、税引前利益のことです。営業利益は黒字を確保したうえで、税引前利益を赤字にするのです。

 それでは、ここから「営業利益を大きくする」ための対策をお話しします。

 P/L(損益計算書)に載っている利益は、上から順に売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、純利益です。そして、それぞれの利益の間には、収益あるいは費用(損失)項目があります。

 営業利益というのは、売上高から、売上原価と販管費を差し引いて計算します。そうすると、この営業利益を高める方法は次の3つになります。

(1)売上高を増やす
(2)売上原価を減らす
(3)販管費を減らす

(1)のカギは本業外の収入にあります。P/L(損益計算書)の真ん中のほうに「営業外収益」という項目があります。このなかに、売上高に持ってくることができるものがないか探すのです。

 一番わかりやすいのが賃貸収入です。ロイヤルティ収入があれば、それも売上高に持ってくればいいでしょう。税理士事務所任せにしておくと、本業以外の収入は、なんでもかんでも営業外収益に計上されてしまいます。

(2)(3)も同じことです。これらの項目のなかで、「特別損失」に持ってくることができるものはないか考えてほしいのです。

「特別損失? 何が特別なのですか!?」と思われるかもしれません。それは、自社が決めればいいのです。

 イメージとしては、臨時的に発生していて金額が大きいものです。災害による損失、大規模修繕、不良債権や不良在庫の処分損、固定資産の売却損や除却損、幹部役員に支払った退職金など、日常的に発生しないものを、ここに持ってきます。