前回は、私がエクセルセミナーに絞って週末起業を始めた理由についてお話しました。
今回は、じゃあエクセルセミナーっていうけど具体的に何をやるんだ?という問題です。エクセルは本当にいろいろな作業ができるので、一言でエクセル教えますといっても、何を教えるのかを慎重に検討する必要があります。
そこで、私は、「ビジネスレベル」と「技術力」の2軸で整理してみました。やはり私もビジネスの世界に生きていますので、ビジネスという軸は外せない。さらに、エクセルは何かと「むずかしい機能」も多いので、技術レベルというものも大事だろうと。
この中で私が選んだのは、以下2つのポイントです。
(1)表を見やすく整える
私がビジネスの現場で感じたことは、「どうも自分で作ったエクセルが見にくい」と悩んでいる人がとても多いという点です。拙著『ビジネスエリートの「これはすごい!」を集めた 外資系投資銀行のエクセル仕事術』でも強調しているポイントですが、私がいた外資系投資銀行では、エクセルの見た目、すなわちフォーマットについて厳密なルールが存在していて、それを全社員が守るということが強制されます。
全員が同じフォーマットを徹底することで、見やすいエクセルを作成することができ、その結果、計算ミスやコミュニケーションミスを減らすことが出来るわけです。
でも、実際に投資銀行でやっていることはとても単純です。数字の色がどうとか、表のタテ幅がどうとか、誰でもできるレベルです。これなら、それほどエクセルを使っていない人にでも、分かりやすく説明できるだろうと思った次第です。
(2) 簡単な収益計画を作成できる
単なるエクセルの使い方を教えるだけだと、なんとなくつまらないですよね。コピペがどうとか言われても、いまいちやる気が起きません。そこで、このセミナーには、収益計画を作れたり、ビジネスのシミュレーションができるというエッセンスを加えました。やっぱり、収益計画とか作れたり、シミュレーションをエクセルでできたら、なんとなくカッコいいじゃないですか。そういうミーハーな気持ちって大事だと思うんですね。
また、簡単に作れるという点も意識しました。エクセルというのは何かと複雑になりがちでして、「エクセルが使える人=マクロが使える人、ショートカットや関数をたくさん知っている人」と思われがちです。また、その先入観が、人をエクセルから遠ざけているような気がします。
だから、投資銀行というブランドを使って、「投資銀行だって、そんなに難しい計算なんかしていないんだ」と多くの人に思ってもらえれば、エクセルに悩む多くの人の背中を押してあげられるのではないかと思いました。
また、ターゲット市場を絞るにあたっては、エクセルに関する他サービスも参考にしました。
例えば、エクセルを学ぼうとすると、パソコン教室に通う方も多いと思います。ただ、このパソコン教室というのは、いわゆるテクニックの話が多く、例えばファイルの保存の仕方などですね。そして中級編になると、vlookupなどのエクセル関数、上級編になるとマクロの勉強、といった具合です。
ただ、実際の仕事でvlookupを使っている人がどれだけ使っているでしょうか? それよりも、もっと基本的な作業(たとえば見やすいエクセルの作り方とか、計算チェックの方法とか)をまずは身に付けることも必要ではないでしょうか? このように、他サービスに対して、きちんと差別化を図れているかというのは、重要だと考えたわけです。
また、他に参考にしたサービスとしては、海外の研修会社があります。アメリカには、エクセルを使って財務諸表を作る専門の研修会社があります。講師はほとんど投資銀行経験者。アメリカの大手ビジネススクールや投資銀行では、この研修会社を使って教育しています。このような成功事例は日本でないため、その市場はまだ空いていると感じました。
日本にはないのに、外国では一般的になっているサービスを見ると、「お、これはいつか日本でも流行るのではないか?」なんて気がしますよね。でも大切なポイントだと思います。